静かなる内戦56~ガーラとニジェ
『アクラ殿は少し体調がすぐれず、、この道中の疲れかと。何ぶんお気遣いが多かったので。』
『苦労を掛けてしまったな。』
ニジェは背中越しにあった大木に寄りかかって首をうなだれた。
『モリンガを煎じて飲ませているところであります。』
『休ませる地でも見つかったか?』
『意外とあるものです。この程度の人数であれば、点在の地でもまとまるかと。』
『それは良かった! この先どのくらいの距離だ?』
『二日あれば。』
『二日、いい具合の距離だ。でガーラ、お前はなぜここまで? この短い時間で?』
『ハハッ、満月に近くなればすでにこの辺りで王の煙を窺っておりますよ。王とお約束したのでありますから。数人の若衆と一緒に。』
『なるほど。』
『その一人が今宵、ガラクシアスの煙を見つけたのですよ。』
『ニジェ様の方はいかがでございましょう?』
『ファルという同い年の者と仲良くさせてもらっている。虫を捕まえたり、魚を獲ったりな、ハハッ』
『えっ、ニジェ様がそんなことを!?』
『楽しいぞぅ!』
『ハッ!びっくり致しましたが、それを聞いて少し安心を致しました。で、ジョラの王は?』
『噂通りのとんでもない奴だ。あいつがおっては、我がマンディンカも安心して暮らせぬ。』
『やはり、、あっマンディンカという名は捨てましょう。』
『民は皆反感の思いを抱いている。そこで、』
『そこで?』
『このグリオの子、ファルが何やら画策している。』
『グリオの子? 反乱?』
『どう出るのかまだわからないが、これに加担しようかと思っている。』
『加担?』
『そう、そうすれば俺達マンディンカ、、いやフラミンガは戦わずともジョラが内側から崩れる。崩れると言っても民ではないぞ。ディオマンシだ。』
『そのガキの考えでうまく事が運びますか?』
『俺も同い年のガキだが?』
『あっ、これは失礼致しました。』
『では、満月の夜は俺を見つけてくれ。練る事はたくさんある。』
『満月では無くとも何かあれば狼煙を。若衆の誰かをこの付近に常駐させましょう。』
『できるか?』
『はい。お任せ下さい。』
『さすが護衛官。』
『では、そろそろ今宵はこのあたりで。 ニジェ様、お元気で。』
ガーラは背を向けたが、何か思い出したかの様にすぐに振り返えり、
『おっと、忘れていました。お土産でございます。』
『なんだこれは?』
『フラミンガの羽根でございます。』
『いたのか?!』
『空を埋め尽くすほど飛び交っておりますよ。』
二人でニコと笑った。
ニジェはガーラを見届けると、枯葉をまき散らす様に裸足で火を消した。
煙は、寄りかかっていた大木に溶け込む様にゆっくりと降りて来た。
ザ、ザ、ザ、ザ、
『おい!今誰と話しておった?!』
月が照らす木々の奥から現れたのは、パプとドンゴであった。




