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静かなる内戦52~隣国マンディンカ物語・第二章3[虹色石]

『ここにいつまで居てもジョラの事はわからない。食いもんは生臭いし、毎晩読経で眠れやしない。』

ニジェは四日目にして耐えられなかった。


ドン!ドンドン!ドン!

 『おっ、誰か来たようじゃのう。ニジェ、お前は奥の部屋へ隠れておれ。』

そう言うとムルは入り口の戸を開けた。


 『おー!エザか!どうした?』

『ディオマンシ様からのお触れでございます。』

 『ディオマンシからの?』


『明日の未明、皆でここを引き上げるという事であります。』

 『はっ、本当かそれは?』

『はい、あの東の小高い山を越え、新たな地を探すそうであります。』

 『移住ということか?』

『さようのようです。 ムル様何かお手伝いするような事がおありでしたら。』


ムルはニジェが隠れている部屋に目を送ると、

 『あ、あ、いや、大丈夫だ。おのれでやる。』


『さようですか。ムル様の家には私達下々には触れぬような物がたくさんございますでしょうから。』

 『お、お、そうじゃ。神々の物があちこちにあるでのう。』

『わかりました。では、明日未明、宮殿の前にて。』

  

  『この地を捨てるのは淋しくなるのう、、エザ。』


『はい、、』

エザの目には涙が溜まっていた。


 

 この地にあったディオマンシの宮殿は、土造りの高い塀に囲まれ、石と土で固められたドシとした見事な宮殿であった。

そして、このジョラの大移動は、マンディンカ制圧の報せを聞いたディオマンシの大英断であった。


 

 【ん?移住?】

 奥の部屋で耳をそば立てて聞いていたニジェは、ここを脱走してジョラに紛れ込む絶好の機会だと思った。




 その夜、ここでの最後の読経を終えたムルは、明日の身支度を済ませ、深い眠りについた。


 【寝たか、、】

ニジェは、静かに寝床から起き上がるとゆっくりと祭壇の前に立った。


 【ムル様お世話になりました。たとえ四日といえマンディンカ人のわたしを匿って(かくまって)頂いたこれはお礼です。わたしがいたのでは、この移住もお困りの事でしょう】

 

ニジェは腰蓑の懐から石を取り出し、そっと祭壇の小さな扉の前に置いた。


    虹色石であった。

 

 あの時、父バル王の椅子の後ろで遊んでいて、そのまま持って来てしまったオパールであった。


その夜、ニジェはムルの家から出奔した。

  

  【ムル様、またこの先の移住の地で】


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― 新着の感想 ―
[一言] 二ジェはこの時まだ13歳なんだよね。 この移動のさなかに紛れ込むとか、考えている事がすごいです。さすが王子ですね、それとしっかりムル爺にお礼を置いていく所が偉い!
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