静かなる内戦49~ムルとモリンガ
『そろそろ向こう岸に渡ろう。』
ファルはそう言うと、若衆の背中からソッと降りた。
『痛くはないか? 行けるか? 歩けるか?』
若衆が聞くと
『いや、流石にここを背負ってもらうわけにはいかないよ。』
ファルは背中から降りるとゆっくりと川の水に足をつけた。
『おっ、傷に滲みて痛いが気持ちいい。歩くよ、歩く。』
『マンサ! あそこだ! あれ! ムルだ!』
『背負籠が横倒しになってるよ‼』
マンサとハラは急いで川を渡った。
『おい‼ ムル爺! 大丈夫か?!』
ハラが横になった籠を外そうとすると、籠はゆっくりと起き上がった。
『ア、れ、ホ、り』
マンサがゆっくり籠を取ると、、
『なんだ!ムル!また寝ていたのか?!なんだよ、[アレホリ]って!』
『寝ぼけてる?』
ハラとマンサは大笑いをした。
『おー!待っとった!待っとった! よくぞ無事じゃった。 で、この様子は?、、、カマラ殿は?』
『殺った。』
『は?どういうことだ? 戦いに行ったのではなかったのか?』
『すべてファルの策略。
カマラを殺るための。パプもドンゴもすべてファルの策略。見事に矢を放ちました。けどぅ、、』
『皆に怪我はないか?』
『「誰一人」と言いたいところなんですがぁ、、ファルがちょっと。』
『ン?ファルがどうした? で、そのファルは?』
『敵に足をやられて。獣用の罠。もう渡ってこっちに来る。』
『敵? 罠とは? やはり誰か住んでおったか?』
『ニジェとその一味。』
『む?、よくわからんが。』
『この奥でフラミンガを見たというのは、実はファルの虚言だったのですが、、本当にいた。
ニジェはそいつらを仕切っていた。』
ファルがようやくムルの前に現れた。
『おお、よくやったぞファル! 今、ハラから聞いた。よくやった!お前が企てたと。』
『いえいえ、皆のおかげであります。』
『で、ニジェがなんとやら?』
『わかりません。沼に現れた50ほどの部族と一緒に、、こちらに矢を向け。』
『矢を!』
『私も、皆もびっくり致しました。それで逃げているときに罠にかかって。』
『ニジェが裏切ったと言うのか? そのような、恩を忘れるような子ではないのにのう。』
『私もそう思います。思いたいです。』
『それ以上にディオマンシ達にこき使われてきたという事か、、』
『ニジェはフラミンガなのか、、 この奥に本当にフラミンガがいたとはなあ。絵空事ではなかったのか、、、』ムルは首を傾げた。
『どころでマンサ、お前、手に何を持っておる?』
『なんだっけ?ハラぁ。 何とかの実。』
『爺は知っておるだろ? ほらモリンガ。』
ハラがそう言うと、背負っていた籠の中身を見せた。
『これをどこで?』
『ニジェ達一味がいた沼の林であります。』
ムルは腕組みをすると目を瞑って言った。
『フラミンガではない、ニジェ達は、間違いなくマンディンカだ。』




