静かなる内戦48~コリとサニヤとディオマンシ
ドン!ドン!
『サニヤ!サニヤはいるかい!?扉を開けてちょうだい!』
『あっ、コリ様、少々お待ちを!今お開けしますわ。』
宮殿の扉を開けると、コリと三人の付き人が中の様子を窺いながら入って来た。
『紐は緩んでないかい?』
『おー! コリ! 紐を解いてくれ~‼ 』
ディオマンシが言うと、すかさずサニヤが怒鳴った。
『だから言ったろう! 結んだのはコリ様だよ! 解くわけがない!』
『サニヤ、ちょっといいかい?』
コリはディオマンシの方を見向きもせず、サニヤを呼び寄せた。
そしてコリの耳元で小声で話し出した。
『あのな、もう近くにフランス軍が迫って来ている。』
『え”~‼ 』
コリは思わず声を張り上げた。
『シっ!口塞いで!』
『お!なんだ!どうした?!何を言っておる!』
『おじさん!ちょっと静かにしてくれないかい。』
『コリ!お前まで!おじさん呼ばわりか!』
『お前には関係ない! あっ、大いに関係あるか、、、』
『今度は「お前」か!』
『フン!人の命を軽々しく扱う奴は「お前」と呼ばれるだけでも有難いと思え!』
付き人の一人がディオマンシの耳を手で塞いだ。
『西の山の上だ。マンサとアフィが声を聞いたらしい。』
『ほう。』
『でだ、さっきな女衆と小さな子らをこのおじさんの隠れ家に避難させた。』
『隠れ家ぁ?』
『そう、こいつは民に黙って密かにフランス軍から逃れようとしていたらしい。』
サニヤは後ろを振り返り、ディオマンシをにらみつけた。
『まったく!』
『ま、そのおかげでわしらも逃げ場があった。』
『まあね。』
『で、ファルたちは知らない? ですよね?』
『もちろん。』
『どうするのですか?』
『マンサが走ってる。』
『マンサがぁ‼ 大丈夫なのですか?』
『わからん。うまく伝えられる事を願うばかりだ。』
『それでだ。ここは今から私が見張る。第一王妃の責任においてな。お前にはこの付き人をつける。』
『ん?』
『マンサも隠れ家を知らん。ファル達が戻って来た時どうなっているかわからぬ上、女衆は皆隠れ家にいる事を伝えて欲しい。まだ若いお前に頼みたい。』
『体力だけなら!』
サニヤはニコとした。
『ファル達がうまくいっておれば、近くまでは来ているはずだ。川の西をゆけばよい。』
『あっ、ですけど、わたし隠れ家知りませんよ?』
『だからこの三人をつけておるのじゃ。』
『あ、あ、そういうこと、、、』
『小さな籠だが、ベリーがたくさん入っておる。お腹も空く。食べながら。』
『わーい!』
『お前はまだまだ子供じゃのう!25だろうが!』
そしてサニヤもまた、三人の付き人を連れてファル達一行の元へ向かった。
『さ、て、と。見張りも退屈だし、おじさん。残ったカジュ酒でも飲みますか。』
『おっ、くれるのか?!』
『また酔ったら次どうなってるか知らないよ。』
コリは大声で笑った。




