静かなる内戦45~マンサ
『フランス軍?!』
『もう攻めて来ているのか?!』
『いや、まだ。 私がさッ、ハアハア、アフィと西の山にベリーを取りに行ったらさッ。聞いたことない言の葉で、何かしゃべってた。ザワザワ大勢の声もした。』ハアハア!
マンサは両手を両膝の上に置き、呼吸を整えた。
『とうとう来たか。』ハラが悔しそうな顔をして言った。
『その前に、カマラは?』
『ファルが見事仕留めた。』
『やったね。』
マンサはニコとした。
『で、なぜお前が連絡に? 一人?』
『ほかに誰がいるんだよ! 男は誰もいないじゃないか!』
『あっ、そうだ。』
『怖かったろ?』
若衆におんぶされたファルがその肩越しから身を乗り出してマンサに聞いた。
『怖いとか怖くないなんて忘れてたよ! あれ?ん? なんでファルだけおんぶ? 甘えん坊?』
『そう、甘えん坊。』
ハラが笑いながら言った。
『罠に掛かった。獣用の罠だ。』
ファルは真顔で言った。
マンサはファルの足を見た。下膨れのように腫れあがっていた。足首には締め付けた縄の痕も残っていた。
『罠って?誰かいるの? 何者か住んでいるの?』
『わからん。50ほどの男達だった。まだ追って来てるのかもわからんのだよ。』
『えッ、こんなことしてる場合じゃないじゃん‼ 早く戻らなきゃ‼ 』
何者かに追われ、戻ってもフランス軍。
マンサはここにきてはじめて背中にゾクゾクとする恐怖を感じた。
『行こう!』
ハラが皆に号令をかけた。
『フランスが攻めて来ぬうちに戻れば、手はある。』
マンサはファルの背中に回り込むと、まだファルの背中に食らいついていたヒルを一匹一匹引きちぎって歩いた。
『お前そんなに優しい子だっけ?』
ファルが振り向いてマンサに聞いた。
『ただ歩いててもつまんないだけだよ。』
『あれ? お前、手に何を持ってる?』
『ああ、これ? 途中でさッ、流れて来たから拾った。見たことない実だったから。』
『見せて。』
『ほら。』
マンサはその実をファルの目の前に持っていった。
『ハラ~‼ これ流されたモリンガの実だよぅ~!』
ファルは先頭を歩くハラに叫んだ。
『あれ?ニジェは?』
マンサはファルに聞いた。
 




