静かなる内戦44~『月明かり』
ファルとハラはジョラの軍と合流し、今度はカザマンス川の東側を帰って行った。
ファルは足の痛みに耐えながら、ジョラの若衆の背中に代わるがわる担がれていった。
それでも若衆達は、川の流れが逆になっただけでもマシだと思っていた。
しかも背負籠は皆捨てて来た。背負っているのはモリンガの実を背負ったハラだけだ。
『あまり足音を立てぬようにな。まだどこかに奴らが潜んでいるかもわからんからな。慎重に。』
ハラは月明かりが照らす川面の反対側を気にしながら、皆に言った。
『ねえ。何か、何か水しぶきの音? 足音?』
背負われているファルが誰に言うともなくつぶやいた。
『ん?』
『、、、、』
『みんな止まって!』
先頭を歩いていたハラが後ろに指図した。前が止まればハラの声が後ろに聞こえずとも列は止まる。
『誰か走ってる。』
『静かに。』
『こちらに向かって来る。』
『もしや、フラミンガ、、』
一行は川辺のシダに身を潜め、静かにその音を聞いた。
『来る。』
『来るね。』
『川の向こう岸だ。』
『来た!』
『ん?一人?』
ダダダっ‼ ビシャバシャ! ダッダッダッ‼
『よし!通り過ぎた。』
『あれ?女?』
『おや?あれマンサじゃないか?』
『あー!マンサだ!』
『マンサだ!! 呼び止めよう!』
『おーい‼マンサぁ‼』
その声にマンサは急ブレーキをかけた。
マンサが振り向くと川の反対側で大勢の男達が手を振っているのが月明かりにハッキリと見えた。
『おーい‼ わたしだよぅ‼ マンサだよぅ‼』
マンサも手を振り返した。
『待ってろ!今そっちに行くから‼ 』
ハラがそう言って背負籠を下ろしていると、マンサは川を渡り始めていた。
『浅い! 浅い! 大丈夫。膝までしかない!』
皆は渡って来るマンサを心配顔で見守った。
月明かりはクッキリとマンサの身体を映し出した。
『皆 ‼
大変だよ!!フランス軍が攻めて来る! やって来るよ! 』




