静かなる内戦41~隣国マンディンカ物語5『王の誕生』
『フラミンガとは!! それは恐れ多い。』
ガーラは首を傾げ子供の発想だと思った。
しかしアクラはニコと笑った。
『そうだな。よく考えればこうなった以上、マンディンカにこだわる必要はないかもしれん。
空想の世界の民に、、いや民ではない。神だな。この遠い東の奥に生活の場を移しフラミンガと名乗れば、崇められる事はあっても侵略には尻込みをするかもしれん。誰も寄りつきはせん。平和に暮らせるかもしれんのう。』
ガーラはキョトンとしてそれを聞いていた。
『マタには、、あっマタ様には悪いがいささかあさはかではないかと、、』
するとそれを聞いていた一人の民が
『ガーラ殿!面白いではないですか! ここにいる皆そっくりそのままフラミンガと化す。
何か希望が見えます。』
『そうだ!そうだ!面白い‼』
『ほら、ガーラ。今生きているだけで御の字じゃ! どうせ東へ抜けたところでただの「逃げ延びたマンディンカ人」 だったら新しい道を選ぶのも手じゃ。そうすれば皆の力も湧く。』
アクラは「頷け!」とばかりに横目でガーラに視線を送った。
『やはり、マタ様はバル王の血を受け継いでいるようじゃ。 この険しい道を歩きながらそんな事をお考えになっていたとは!』
ガーラは頷きながら大声で笑った。
『しかしじゃ、、、マタ様。
そのマタという名はマンディンカの王族の名であります。古くはマタという王もおられました。
マタを名乗れば一発でマンディンカとわかってしまいますが、、如何なさいましょう?』
『それはマズい。なにか良い名はないか? アクラ。』
アクラはしばし考えた。
『我らが今こうして生きてこの道を東に向かえるのも、このモリンガの木のおかげ。
このモリンガの種は、遠くニジェールの国の王からの頂き物。』
『ニジェール?』
『そう、ニジェール。さすればその御恩に授かって、【ニジェ】という名はいかがでしょうか。』
『ニジェ。 いい名だ。』
『ではよろしいですか?ニジェ様。』
アクラはまたニコと笑った。
ここにフラミンガを名乗る、
ニジェ王が誕生した。
正式名「ニジェ・フラ・アビエ」である。
『さあ!行くぞ‼ モリンガの森を東に突き進もう‼』
皆、活気立った。そしてマンディンカ特有の煌びやかな服を皆脱ぎ去った。




