静かなる内戦40~隣国マンディンカ物語4『ジョラの先』
『だいぶ疲れてきているようだな。女衆は大丈夫か、、
草を刈り、枝を切り落としての行軍だ。フランス軍も気になるが倒れては意味がない。』
アクラがそう言うと、
『皆、縁者と離れ離れになった上のこの強行軍は、心にも如何ばかりかのダメージを与えておるようであります。休みながらと言っても、、』
ガーラは答えた。
『なあ、ガーラ、わしに一つ考えがあるのだが。』
『と言いますと?』
『マタの事だ。』
『マタ?』
『マンディンカはもう返らん。フランスの手に渡ってしまった。王も民もいないと同然。
今逃げ延びているのはたぶんここにいる者だけだ。』
『私もそのように思います。』
『そこでだ、行軍中の少ない人数ではあるが、マタに王になって頂こうかと考えておる。』
『マタを‼』
『王の血を受け継ぐのは彼一人。若い王だが、誕生すればこの者達もきっと活気づく。どうだ? ガーラ、そうしてみては?』
『なるほど!良いお考えだと。』
ガーラは膝を叩いた。
『では、マタは後方を歩いてるので呼んで参ります。』
マタは走ってアクラのもとに来た。
『マタや、わしの言う事をよく聞いてくれ。お前は13だったな。』
『はい、それがどうか?』
『今やわしら一行は、明日生き残れるか、今日生き延びるかの瀬戸際じゃ。そこでな、これだけの部族になってしまったが、マタに王になって頂きたい。どうじゃ?』
『えっわたしが⁈ いきなり言われましても、、それは無理でございましょう。』
『マタには悪いが名前だけでも良い。なれば皆の力になる。助けてくれ。』
横でガーラもうなづいた。
マタは後ろを振り返った。
皆、朦朧として歩いている。
草を刈る手は鎌さえ持てない。目も開いているのか瞑っているのか、ただついて来ているだけ。
それを見たマタはしばらく考えた。
『わかりました!アクラ様のお望みであれば!』
『おー‼ そうか‼ ありがたい‼ 皆もきっと喜ぶ!ならば、もう「様」はいらん! 「アクラ」で良い!』
アクラとガーラは大声で笑った。
『しかしながら、、、一つ。条件がございます。』
『「ございます」ではなく、「ある」で良い。 で、条件とは?』
『道すがらずっと考えて来たことがある。』
『ほう?』
『すでにマンディンカは終わった。ならば新しい一歩を踏み出したい。』
『新しい一歩?』
『マンディンカは捨てる。』
『捨てる?』
『どうせジョラを越えて東へ向かうなら、この者達だけで新たな部族を作りたい。』
『新たな部族とは?皆マンディンカ人であるぞ?』
『山を越え、ジョラを越え、』
いつの間にかアクラとマタの周りには皆が集まってきて、その話に聞き耳を立てた。
『伝説の神の民フラミンガになる!』




