表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/345

精霊の森 9~神の砦

100人も残らなかったカザマンスの国。

やがて衰退の一途を辿たどった。人々は10人単位で少しずつこの地を離れていった。


 密林の奥地。人知れずカザマンス王国は消え去った。

ギザとその取り巻きの行方は誰知る事なく。


 ここにカザマンス王国は滅亡した。



ーーーーーーーーーーーーーー



 こののち100年。

今から50年ほど前。一人の探検家がこの地を訪れた。

サハラやマリからの乾いた風。変動した気候。ここは以前の密林とは一線を画す乾燥地帯と変わっていた。水路はその砂に埋もれ、わずかなカザマンス川の流れがその地中を通り、掘られた赤土の落とし穴にヒタヒタと滲みこむだけであった。


 そこで見つけた赤土の瓦礫がれき

彼はそのブロックのそこかしこに彫られた【G】の文字。

マンディンカからこの地を攻略したフランス軍将軍ジルベールの頭文字と断定した。つまりこの城壁はフランス軍の物だと。


 

 その翌年の事である。

探検家は再度の調査に、この地方に詳しい歴史学者と植物学者を伴ってここにおもむいた。

  

 

 「これだ。これなんだが。」

「ほほう。確かに【G】と書いてある。手彫りだ。」

歴史学に詳しい教授は感慨深く手に取った。


「しかしな、私が曾祖父から聞いたのはここにフランスは攻めて来てはいないという事だったが。」

この地の植物学者が切り出した。

 

 「バブエ先生。それは誠ですか?」

「私の曽祖父は現にここに足を踏み入れてるらしいのだ。私と同じ植物研究の為だと聞いた。」

 「では、この砦は? なんの為に?」

「それはもう言い伝えの中での話。それ以上の事は私もわからん。」

 「しかし、このブロックの数といったら、かなりの物だ。風化しておるのにまだこんなに残っている。」


 ポトン


 詰まれた瓦礫の横に生えていた一本の大木。

そこから一つ、白く丸い実が落ちた。



  「あっ!!」

3人は揃って声を上げた。

「これだ!!」


挿絵(By みてみん)


 「文字ではない!!絵だ!!」

「バブエ先生これは?!」

 

 「これはカジュの実だ!この地方には古くから生えている木。この木は樹齢200年は越えている。」

3人はその葉の木漏れ日を両手でさえぎり、白い実がたわわと成っている枝々を見上げた。


「では、これは?」

 「この地を住処すみかとしていたジョラ族の物に間違いない。カジュは神に匹敵する物と聞いておる。この部族の者達が一つずつ堀り、積み上げた物だ。」

「つまり攻め入ったフランスから守るための城壁?!」


 「神の砦というわけか。」


 城壁を取り囲んでいたカジュの木同様、赤土のブロックにも沢山のカジュの実が成っていた。

※「カザマンス」冒頭は、

この探検家のくだりから始まります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ