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精霊の森 7~再びのフラミンガ

 ギザ王。15の年の8月の朝のことであった。


「大変だ!大変だ!檻の中でディオマンシとジルベールが!」

 「どうしたんだ?」

「今、朝飯を持って檻に向かったのですが、二人とも仰向けになって倒れています。呼びかけても何も返答がございません!」


 「二人とも?」

「はい。寝ている風情ではありません。そのままバタリという感じであります。」


ニジェはサバを連れ出し、檻の前まで赴いた。倒れている二人に声を掛けながらそのカギを開けた。

「大丈夫か?ディオマンシ! 起きろ!ジルベール!」


草のむしろの上、息絶えていた。

 

 銃痕は無かった。

夜中。射ても音のしないであろう矢が、胸と背中に刺さっていた。

胸と背中、、檻の中で逃げ惑った形跡がうかがえた。




「ギザの仕業であろう。」

サバが言った。

「この間、取り巻き連中との話を聞いた。こいつらの面倒をいつまでみるのかと。どうせ檻から出さぬなら、殺した方が手っ取り早いと。」


 「こいつらは罪を償わせる為にこの檻に入れたんだ。命を奪う事が目的ではない。なぜそれがわからんのだ。」

ニジェは王にいきどおりを感じた。


 ギザを王に指名した彼の責任は大きかった。




これまでもそうだった。サバやニジェが何を問うても

「王の命令だ」としかのたまわない。


 なにか仕掛けようにも、ニジェの頭の中にはあの赤土のブロックを丁寧にこさえていた幼いギザの面影がよぎる。ましてやこの王を弾劾、殺戮など考えられるはずもなかった。

 いつ何どきも、王の前では引き下がった。





「なあ、ニジェ。俺達は元々、マンディンカから来たのだ。ここのジョラとは違う。時々の風習やしきたりの違いも俺達が間に割ってきたからこそ治まって来れたのだ。」


 「ああ、しかし今回はいくら罪人の二人とはいえ、殺しだ。俺はもうごうを煮やしたよ。」


「出るか?この村から。」


 「ここにいるマンディンカ人に声を掛けてくれ。皆同じ気持ちだと思うんだ。それにこの東の先、住むには心当たりの場所がある。」


「知っておる。以前この森の道中。ファル王様にお聞きした。」

 「ふふ。」

「フラミンガの森であろう?」


 「そうだ。ならば話が早い。」


「どこまでもファル王は偉大であったのう。先々すべて手が打ってある。」

 

 「ファル王様に聞いてなければ、東の密林などサバ様も不安に駆られた事でありましょうし。」


「透き通る泉が湧く、ムクロジとモリンガの森と聞いた。」


 「この地よりも多くの精霊が現れますが大丈夫でしょうか?」


「われわれは昔から精霊とは友だ。ムル爺にしろアクラ殿にしろ。」


 「では、マンディンカ人。再びのフラミンガとなってこの地を離れましょう。」


「ギザ王に手出しをせんで済むしな。」


 

マンディンカ人100余は、翌日の新月の夜更け、ほとんど手ぶらの状態でカザマンス王国を後にした。もちろんのこと、その先頭にはガーラがいた。


 カザマンス川には照らす月明かりもなかった。



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