精霊の森 6~農園に舞うタカ
カザマンス王国
ここにギザ王が誕生した。
一度は己自身で割った椅子。
ディオマンシは檻の中、また雑草の莚に寝る事となった。
遊び盛りのギザは嫌がったが、幼少の王をその座につかせる事で民の派閥や蟠りはなくなった。
フランス将軍ジルベールはニジェの憤慨により、ディオマンシと同じ檻に牢獄された。
オランダ兵ハーンと整備兵達は、宮殿の裏手カザマンス川の畔から蒸気ボートで母国に向け出発した。
ブラルとバズはこの地に残った。またダカールやルーガに戻ればフランス軍やオランダ軍に戦々恐々としなければならない。この地で同じアフリカの民と暮らす方がいかに幸せか。それはヤッサ売りのカロとダラも同じであった。得意の料理をここで振る舞って生きていこうと決めた。
文字を覚えたワリやアゾは、ここで小屋の学校を作り勉強を教えた。
ダカールの管理官バブエ。
彼は彼の地では逃亡者だ。いつかフラニ族の村に帰れると信じ、しばらくはここで好きな植物の研究に没頭する事に決めた。時々はワリやアゾの作った学校でその知識を遺憾なく発揮した。
ニジェとガーラ、ハラとドルンはこの幼い王を取り囲む様にその力を奮った。
マンサ。
彼女は王妃ではなくなった。
他の国であればギザを示唆する皇太后。ジョラではコリと5人の夫人達のように下皇だ。
しかし、マンサはまだ若い。彼女は自らその地位を退いた。
母親やアフィと共に畑を耕し、カジュの農園を切り開く道に進んだ。
農園作りにはその知恵を持つフランス兵アランが一緒に鍬を持って働いた。アランについて来た残りのフランス兵もここに掘っ立て小屋を建て、仕事終わりにワイワイとカジュの酒を酌み交わした。
アフィには初めて見る人種。透き通る青い目、白い肌、黄金の髪。
彼女は一人の若い兵に恋をしているようでもあった。
以前ならばカザマンス川の向こう岸。
ひっそりと暮らしていた空の王カンムリクマタカであったが、この頃は宮殿の真上に訪れヒュールと旋回し、マンサの農園を舞う。
あたかもファルがその様子でも窺うかのように、また森に帰っていくのであった。
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しかし、この暮らしぶりはその後10年余りで道を険しくする。
それはこのギザ王。
幼少の頃からおだてられ、崇められてきた代償。
ファルと同じ、15歳になった王は絶対権力者の地位を不動のものとした。
それは、ディオマンシの比では無かった。
カンムリクマタカの心配は当たった。
※カザマンスをいつもお読み頂き誠にありがとうございます。
この物語。少しずつ、いや目の前に終わりが近づいてきました。
私としても感無量の一抹の寂しさを感じております。
あと少し、お付き合いくださいませ。