表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/345

精霊の森 3~石山の鳥葬

 グリオの葬列が森にその音を響かせた。

偉大な片腕の少年。ファル王の葬儀であった。

カザマンスの森は、押し黙った民の森。

グリオの楽器の音だけが森林を風と抜けた。


 ンバイとマリマは後列で抱き合いながら歩を進めた。

マンサは前を向き最前列をグリオ達と歩いた。


 向かったのは宮殿の奥、カザマンス川の畔。

そこにひとつひとつ石を積み上げた。

ハラやドルン、ニジェがこしらえた石の山。人の背丈の二倍の高さ。

その頂上は人が一人横たわれるほどの平らな葬台。


 ファルはここまで運ばれた。

赤紫の莚の間から、時折花がポロリと落ちた。


 ファルの御体は横にされ、ハラ、ドルン、

背の高いニジェとサバが後方を担いだ。

崩れそうな石段を、一歩ずつゆっくりと。


赤紫の莚のまま葬台に寝かされたファル。


 ムルが石山の下で、文殊を唱えた。

それは死者の魂を抜く為。無事に森に帰す祈りだ。


 死者は鳥になる。

その肉体は鳥葬という手段によって行われる。


生きるために、他の生命を奪って来た人間でも、死してその肉体を他の生命に与える。


 与えた事により罪は流され、肉体は天にゆく。

奪いに来るのは鳥の王カンムリクマタカ。

翼を開けば、2メートルにも及ぶ怪鳥だ。


 畔にはムルの祈りの低い声と川の流音。

時折崩れる石山のコロコロという音。


 カロとアゾは持っていたフライパンを、ファルの頭と足の辺りに立てた。それぞれにパーニュの布切れを結ぶとそれを旗印とした。


 それは鳥王への目印となる。

天への捧げ物。


 しかし、いつもは抜け目ないカンムリクマタカ。

この日は一向にファルの迎えに来なかった。


 夕の日が沈みかけた。

その光は、空に浮かぶ鱗雲うろこぐもを濃いピンクに染めた。

東にポッカリ出た淡い月はその色に滲んだ。


 「どうしたんだろう?」

ニジェが言った。

 「タカが来ない。ファルが名残り惜しんでいるようではないか、、」

 

「時機に来るであろう。きっと満腹なんじゃ。」

 ムルが言った。

 

 「満腹?満腹とは?」


「多分だが、ほれ。瓦礫の下敷き、落とし穴のオランダ兵。沢山の食い物がある。」

 「そうか、、」


「きっとファルは最後だ。」

 「なぜ?」


「奴らの方が奪って来た命が多いからだ。まず奴らからそれを奪い返さんとならん。」


 「ファル王様からは奪えないという事か、、」


「大丈夫だ。そのうちタカは来る。ちゃんと密林に帰してくれる。天に帰してくれる。」


 「では、私は見届けます。ファルがこの森に帰って行くところを。」



ここに、ンバイとマリマ、マンサはいなかった。


鳥葬という儀式。家族は参列が禁止されているからだ。

そのむごたらしいさまは、血筋の目には焼き付けてはならぬからだ。


※びっくりしました!

今夜、本当に満月のピンクムーンなんですね!(日本では)

あー驚いた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの鳥葬なんですね…… しかも終わるまで見守らないといけないとは。 確かに身内は見守ることなんてできませんよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ