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殺戮と滅亡 101~落ちた仮面

 グワーッサ~!

黒い獅子の仮面がむしろの上に落ちた。

その後を追うように、ファルがうつ伏せにグシャと倒れた。

 錆びた槍だけが立っていた。


 「ファル様ぁ!!ファル様ぁ~!!」

驚きのあまりに、マンサの身体がけ反った。

何事が起きたのか、マンサは棒立ちとなった。



「ファルよっ~!ファルぅ~!」

 真っ先に走り込んで来たのは母親マリマであった。

マリマはファルを抱きかかえると仰向けに寝かせ、

すぐさま左肩に巻き付けてあったマンサの包帯代わりの腰紐を引きちぎった。

 

 あらわになった赤いケロイドの傷口。

そこにムシャぶりついた。

毒を吸い取るように、その血を口に含むとむしろに吐いた。

 吸っては吐き、吸っては吐き。


駆け寄ったマンサ。

 「お母様!私が代わります!」

マリマの背中に手をやった。


しかしマリマはやめなかった。

 父ンバイも駆け寄ったが、マリマはファルの体、その傷の肩から離れようとはしなかった。

周りの声など聞こえてはいなかった。

 


 マンサはの当たりにした。仰向けになったファルの顔。

目は閉じ、褐色の堀深い少年の顔が真っ赤に膨らんでいた。


黒い仮面がその顔を

 誰にも気づかれないように掻き消していたかの如く。


 ファルの胸に手を当てると、炎天下の皮膚の熱さではなく中から湯気のように湧き出るジワと来る熱。

感じた事のない灼熱をマンサはその手に受けた。


 マンサはその場に屈むと、ファルの頬に自分の頬をくっつけた。


バサッ

まだそのまま背負っていた赤紫の背負籠。

白い花と紫の花。

ファルの顔を覆うように赤紫のむしろこぼれ落ちた。



 「やめろ~!!マンサ~!」

ニジェが叫んだ。

 「不吉ふきつだ!不吉だ!!」

この時ばかりはニジェもマンサを呼び捨てにした。


ニジェはその花をむしろの上から蹴散らした。

 「ひつぎじゃないんだ! こんな物、被せるんじゃな~い!!被せるんじゃないよ~!」

その声は泣きじゃくっていた。

 「早くムルを!ムルを呼べ!誰か早くムルを呼んで来い!祈祷だ!ファル王を助けるんだぁ!」




 もうとっくに高床の軒並み。

ニジェの号を受けるべくもなく、千里眼とハラが宮殿に向かっていた。

走りながらハラは絶叫した。


「助けてくれ~!誰かファル王を助けてくれ~!!」


 その家々の通り。密林にぽっかりいた青い空。

東から一羽の黒い鳥が、ギャと一声上げるとハラと千里眼の真上、西の林へと急降下で消えていった。

 鳥の行方など意に帰さない。

二人は無我夢中で、走った。



「ムルぅ~! ムル殿はおられるかぁ~! ムル爺ぃ~!」




 

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