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殺戮と滅亡 100~消え去ったオランダ軍・アランの罪と罰

『 ではお引き取りを。』

カザマンスの民に囲まれたオランダ軍は成すすべがなかった。



頂上の炎天下。

 オランダ兵の落とした肩はグッショリと汗で滲んだ。

密林の道。ジャングルでの戦いは人対人ではなく、人対自然という事を思い知ったかのように、誰一人抵抗する者もなく、誰一人、口にする者もなく、ただ風に押し流されるが如く西へ歩を進めていた。


 鳥のさえずりも、獣の叫びも嘘のように押し黙り消え去った。

まるで葬儀の隊列を見送る者のように。

太陽の眩しい光線だけが彼らの前を照らした。



 


「あのぅ、ファル様。私にも何か処罰を与えてください。私はパルマランにおいて、この西のアフリカの民の弾圧。多くの奴隷を南米に送り込みました。その罪は計り知れず大きい。なんなりと。」


 『アラン。もうよい。心入れ替えた者に罰を与えてはならぬ。オランダの整備兵達と一緒に帰っては如何かな?』


「いえ、それでは私が納得できない。私はこの地で心を救われました。サバ様やバブエ殿にお会いしてなければ人間の尊厳の何たるかを知る事はなかったのです。ただやみくもに人を売りさばいていただけの卑しい人間であったでしょう。ですから何とぞ罰を。」


 『では、わかりました。アラン少尉殿の罪に罰を与えましょう。アラン殿はフランスで葡萄の農園をしておられるご子息と、サバの兄上からお聞きしました。このカザマンスもカジュという実からなる酒を造っております。それを手伝っていただきましょう。しばらくフランスには戻れませんが、、、

それを罰といたしましょう。』

ファルは物腰柔らかく丁重ていちょうに罪を与えた。


「えっ!それは私にカジュの作り方を教えているに等しい。それが、、

それが罰ですか!?」

アランの青い目から更なる青い涙が零れ落ち、頬をつたった。


 『フランスに戻った暁には、それを生業なりわいのひとつとすればよいではないか。心正した者の罰は、前を見据えた罰でなければならぬと思うのだ。いかがかな?』


アランは一言も口に出来なかった。

ただ有難きと念じた。


 

 

 ヴィンセント率いるオランダ軍の姿はあっという間に消え去った。

ここは木々達が連なり寄り沿って生きている密林の地。

見送る時間は、ごくわずか。

数歩歩けば木立に消え入るのは風と同じ。


 何事も無かったかのようにオランダ軍は去って行った。

わずか数時間での退却を余儀なくされた。白い悪魔たちであった。


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