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殺戮と滅亡 97~見参!『わたしがこの国の王ファル』

 オランダ兵は取り囲まれた。

西にはマンサ。ハラ、ドルン。ガーラ、バブエにワリとアゾ。カロもいた。

フランス将軍ジルベールにアラン少尉。木の上から降りたブラル。

彼らの後ろには弓を引いたまま仁王立ちする350の兵と民。

 

 後ろを振り返ると、

コリと5人の女達。矢を身構えて立つ。

彼女達を守るようにファル軍350の兵。

 

 頭上にはサバとバズ。サバの肩にはひょっこりパタス。


 オランダの敵は中にもいた。

ハーンと繋がれた整備兵20だ。


 「どうする!ヴィンシェントゥ!!」

ジルベールに名前を聞いたばかりのこのオランダ軍の男に、マンサは怒鳴った。

通じるわけもない言葉。しかしその声と言う音の怒涛にヴィンセントはまたしてもチビッた。


「負けるわけにはいかんのだ。」

ヴィンセントは言った。


 「まだわかってないようだな。さっきから言っておるだろ!!ほら見ろ!!勝ち負けにこだわっている! カジュを採りに来ただけなんて信じられるか!」

サバが木の上から吠えた。


 


 その時、後方のコリがオランダ兵の塊りを二つに分けるようにゆっくりと進んで来た。

構えた弓矢。その弓の先で一人一人のオランダ兵の尻を払うように「どけ。どけ。道を開けろ」と。


 サニヤがその後ろを槍でチョンチョンとオランダ兵の軍靴をつつき、ロダが矢をほうきのようにパタパタと、セグとメッサは両手で兵を押しのけた。


 オランダ兵の真ん中に道が出来た。

軍靴で踏みつけた草木そうもくのカーペット。

まだ残っていた高い木々からの朝露は、真上の太陽の日を受け、虹色のカーテンとなってポツポツと降り注いだ。

それは木の葉の揺れと相まって、影と日向ひなたを繰り返しオランダ兵達を覆った。



 最後に現れたヘレが、その道の真ん中に紫のむしろをサッと敷いた。

クルクルと捲いてあったそれはわずか3メートルの長さであったが、ベリー好きなマンサが戻って来た時に、お迎え用にと民と作った染めた葦。


 オランダ兵達は何事かと、更に道を開けた。

ヘレはその紫のむしろに膝まづくと、何かまじないのようなものを二言三言唱えた。


 唱え終えるとむしろについた赤土の泥を、自分の頬の両側に塗りつけた。

それはライオンの髭の様。三つ指でササと描くと、瞬く間に乾きピンク色に染まった。

 何かの儀式が終わったようであった。

 

  

  草木が揺れ、風の音が木霊した。


その林の奥から声がした。

 

 「神よりの降臨!カザマンスの王!密林の王!! 」

ニジェが叫んだ。叫び続けた。

「どけどけどけ~!! 王様のお出ましだ~い!!」



 墨で真っ黒に塗られた木彫りの仮面。吊り上がる通し目。

三日月に彫られた口元には、ライオンの牙が2本。

仮面を取り巻くモロコシの髭はその獅子のたてがみ


 右の腕にはトゥーカンをかたどった銀細工の腕輪。

足には鈴のアンクレット。

それらが褐色の肌に凛と映えた。


 

   『ファル。わたしがこの国の王だ。』


ひどく落ち着き払った神の如くの物言いだった。

 

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