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殺戮と滅亡 94~俺達はオランダに帰れない?

「ヒョイヒョイ~!ヒュ~イ」

ヴィンセントの頭上。その木の上で口笛が鳴った。


 オランダ兵はキョロキョロと空を見上げた。

横を見た。後ろを振り返った。


 遠吠え?

それは猿のように木から木へと飛び移って来たブラルとバズであった。

 

 オランダ兵と言の葉が通じぬ2人は木の下にいるオランダ兵達に、「後ろ!後ろ!」と合図する様に親指を立てた。



「んん?」

 彼らは後ろを振り返った。


同じ徽章。真っさらな軍服。

うなだれ、下を向いた男達。

そこにいたのは、自軍の機帆船の整備兵達であった。

両手には縄を巻かれ、20の兵は横一列。一つに繋がれていた。


 ヴィンセントは驚いた。ここに居るはずの無い整備兵。

このオランダ先頭部隊でさえ、昨夜この地に着いたばかり。

彼は確かめるように、目をこすった。

(なぜだ?)


そこには撃ち殺したはずのハーンもいた。


 ブラルは、マンサさながらに、そのハーンに目で合図を送った。

オランダ語で対峙出来るのは互いの彼らだけだからだ。



「ヴィンセント殿。その節は失礼を致しました。」

 「なんだ。生きておったのか。」


「当たったのは脹脛ふくらはぎだけでありましたので。」

 「嫌味か、、」


「実は私達、この地の部族達に捕まりましてこのような事に。」

 「フン!情けない。」


「それでぇ、、ですね。整備兵が捕まったという事は、、つまりぃ。船が破壊されまして。」

 「はぁあ?」


「小奴らをやっつけても、オランダまでは歩いて、、泳いで、、帰らなければならないのですよ。」


ブラルとバズは木の上の枝。笑いをこらえるのに必死であった。




「ヴィンセント殿。どう致しましょう? このまま手出しをせず降伏した方がよろしいかと。」


 「うぬけ!ハーン!!お前らはそれでもオランダ兵か! 何を言っておる! こんな奴らに負けて無様ぶざまにオランダに戻れるかぁ! 馬鹿どもがぁ~!」


「いや、ですから戻れないんですって。どっちにしろ。」

 「うぐぐ。」



二人が言い争いをしている間に、ブラルは木の枝からヒョイと降りマンサにこの状況を伝えた。


 「なるほど。ブラル。でかした。」


 マンサはその場に胡坐あぐらをかくと、ヴィンセントとハーンの様子をうかがいながら、背負っていた籠の花を一本抜いた。


 「まあ、なんていい匂い。」



(は?! なんだこの女子おなごは、、わしに言わせといて、、)

ジルベールは自分の足元に座り込んだマンサを見下ろした。

フランス将軍の鼻にも背負籠からのほのかな甘い花の香りが吸い込まれた。


「こいつらの戦い方って、、」


「どんな時でも一瞬の幸せをのがさないらしいですよ。」

ジルベールの隣。アランが言った。

「こんな時でも? 獣と一緒だ。」


 「だから、ここで暮らしていけるのですよ。」






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