殺戮と滅亡 92~紫の背負籠
ダラは汲み上げた桶からその水をフライパンに移すと、ファルの口元に当てた。
「ファル様。ゴクリと。」
『ありがとう。悪いな。ダラ。』
「いえ、外はドンパチ。そんな最中、ファル様に倒れられては。」
『いや、サバの兄上がいる。ニジェがいる。後ろからはマンサ達もきっと来る。オレより頭の出来る者がここには沢山おるよ。』
そういうと、ファルはフッと気を失った。
褐色の頬に赤味が差した。熱かった。
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ニジェは傷ついたその目に、モリンガの軟膏を塗ってもらうと、弓矢を片手に火のついた瓦礫の山を一目散に飛び出した。
「ゆくのか!?ニジェ!やめろ!その目では!」
「ここでゆっくりはしておれんよ!ムル!ありがとう!おかげで治った!」
「治ってはおら~ん!!」
声を掛けたがニジェの姿はもうそこに無かった。
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コリ達6人の女は、弓と銃を左右に持ち、逃げ惑うオランダ兵を追っかけ回した。
オランダ兵が振り向き、銃を放とうとするとブラルとバズが木の上から矢を放った。
20のオランダ整備兵達は無論仲間を撃つ事が出来ず、ブラルとバズの隣の木の上。
銃弾を地面に放ち威嚇した。
ムルの博物館から飛び出したパタスはその群衆の中を縦横無尽に駆け回ると、オランダ兵の白い顔を引っ掻き回した。
民家の裏手に逃げるように回り込んだ兵。
それを見たカザマンスの兵が裏の小窓からも銃と弓を乱射した。
落とし穴に落ち、ずぶ濡れになっていた幾人かの兵は、足がもつれてパタンと倒れた。
立ち上がろうとすると、その背中にも矢が飛んで来た。
ヴィンセントはその塊りの兵の真ん中、守られる様に西に向かいヘイヘイの体で難を逃れた。
林の中に紛れると、膝に手を置き、頭を擡げ呼吸を整えた。
それはどの兵も同じであった。
下げたおでこからは、香水と糞尿が入り混じった汗が滴り落ちた。
「ヴィンセント殿。股間が濡れておりますが。」
普段であれば銃を放たれるところであったが、ヴィンセントはこの時ばかりは一言も口にしなかった。
「追っ手がすぐ来るやもしれません。すぐにでもまた移動しないと。」
「わかっておるわい!」
ヴィンセントは頭を上げた。
「はい!!そこまでっ!!」
ベリーの赤紫に染まった光沢のある背負籠。
そこからは零れ落ちるように摘まれたモリンガの白い花。レンズ豆の淡い紫の花。
まさしく籠盛りの花々。
それはマンサとアフィが、ベリーの成る原っぱに落として来た物。
背負っていたのは、マンサだった。
その左手には同じ紫の背負籠。アフィの籠。
背負っていたのはハラ。その籠には無数の矢。
オランダ兵を封じ込めるように横一列に並んだのは、
ガーラ。ドルン。バブエ。アラン。カロ。ワリ。アゾ。そしてジルベール。
皆それぞれに矢と銃を構え
密林の木々のように立っていた。




