殺戮と滅亡 85~もののけディオマンシ
「ほれ!!ディオマンシ!お前も手伝え!」
ブビンガの一枚板で遮断されていた水門。それはディオマンシの檻の横。厠で堰き止められていた。
「せ~のぉ!!」
ロダとヘレ。ディオマンシは檻の中からその板を一気に上に引っ張り上げた。
ザザザザ!ザッブ~~ン
怒涛と流れ出したカザマンス川の流れは、水路に落ちているブロックの瓦礫を掬い上げ、乾いた赤土の塹壕の土手を削り取った。
それは赤い土石流となって一直線に落とし穴へと突き進んだ。
ニジェはこの水路を落とし穴と繋げていたのだ。
「ディオマンシのおでぶ!そしたらこれだ!これを着ろ!!早く!」
それはギザが、葦と常緑の葉で編んだ外套だ。
「頭から被るんだ!!いいなっ!」
ロダが言った。
その赤土を含んだ濁流は滝の瀑布となって、落とし穴へと流れ込んだ。
「うっわぁ~!助けてくれ~!」
ゲボゲボ ブクブク
「苦しい~!臭い~!くっさぁ~い!」
ゲッホ!ゲッホっ!
オエ~!オエッ
もちろんの事その濁流には、ディオマンシが水門に溜め込んでいた糞尿がたわわに含まれていた。
その滝つぼが水路の終点。
落とし穴の水量はグングンと増し、見る間に外へと溢れ出た。
下敷きの上にいた者は、その水と共にプカプカと浮かび上がった。
「しめた!」と思った兵達は穴の縁を掴み、水と一緒に穴から飛び出した。
飛び出た彼ら。
溢れた水路を横切れず、その水路伝いを逃げるしかなかった。
どこぞに消えたのか、ヴィンセントの姿は無かった。
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「来るぞ!こっちに向かって来る!」
「わかってるな?!おっさん!ニジェに言われた通りにやるんだ!」
「さもなくば殺されるぞ!」
「じゃあな!また。」
「または、、ないか?ハハッ」
ロダとヘレはそう言うと、宮殿の中に一目散に逃げ込んだ。
「わ!わ!わしを!わしを一人にしないでくれ~!頼む~!ロダぁ~!ヘレ~!戻って来てくれ~!
あ、あ、あ、来た来た来たぁ!奴らが来たぁ~!殺されるぅ~!」
バタバタバタッ
逃げて来たオランダ兵の前に現れたのは、獣のような臭いがするプンプンの檻。それは図らずもディオマンシの垂れた糞尿。
「わッ!なんだ!この檻はぁ!化け物だ~!獣の檻だぁ!」
彼らにとっても、ディオマンシにとってもその恐怖は互いであった。
覚悟を決めたディオマンシは、檻の柵を両手で強く握り締めると、腸の底から空気を吐き出すように有りっ丈の雄たけびを上げた。
ギャギャギャ!ギャギャぁあぁ~おぉぉ!
ガオガォガオォォおおおォォォ~~ォぉ~!!
木の葉のお化けの叫びは、宮殿にいるギザ達の耳元まで轟いた。
ポッキ~ン!バキッ
その両腕の火事場の馬鹿力は、檻の柵をへし折った。
「檻を突き破ったぞ~!」
「「ひゃ~!ホントの化け物だぁ~!撃て!撃て!化け物だ~!」
「獣だぁ~!もののけだぁ~!撃て~!」
カチャ。カチャ。プシュン。
「あれ?銃が、、、」
さっきまで水に浸かっていた兵。
銃は無用の長物となっていた。
「逃げろ~ぉ!化けもんに殺される~ぅ!」
※ディオマンシのお姿
ガチャピン・ムックのムックの方を想像してください(笑)