殺戮と滅亡 83~崩れた落ちた城壁
『コリ!!火を!火を点けて~!南側から~!』
シュッ! ボッ!!
火薬を摺り込んだ乾いた葦の紐に火が放たれた。
その炎は静かにバチバチと音を立て、ネズミのように城壁の裾を這う。
向かうのは2メートル間隔に置かれた火筒。レノーからの贈り物。
ダイナマイトだ。
「ゆッけ~‼~‼」
コリの声が宮殿内に怒涛した。
城壁の縁に止まっていた、時を忘れた数千の鳥たちが一斉に大空に舞い上がり雨雲のように空を覆い尽くした。
ドッカーン!!
ドゥゥゥぅン! ドダダダダドッカーン!!
バ~~~ン!
バラバラバッラッ~ン!!
一発目の火炎と共に、その先の葦の紐が大蛇のようにクネクネとうねった。
大火に覆われた紐は蛇から竜に変幻し、けたたましく城壁沿いを駆け上がった。
『コリ!下がれ~!早くぅ~!!下敷きになるぞ~!急げ~!』
薄く支柱のない高さ6メートルの城壁は、竜の後を追うように爆発穴を開けながら、南から北へとドカドカと、崩れた始めた。
ド~~~ンッ!
バラバラバラ~! ドッッド~ンンッ‼ ! ‼
乾いた赤土の粉塵は噴火さながら、天空をピンクに帯びた白煙で染め上げると、
沈んだ煙は下からうねり込み、津波のようにオランダ軍を飲み込んだ。
壁の真下にいたオランダ兵達の頭には豪雨の如くブロックの塊りが降り注ぎ、倒れた兵の上にはまたブロックの破片が突き刺さる。
埃と化した砂土は、彼らの目と耳はもちろん、鼻の奥、舌の裏までをも塞いだ。
「ひゃ~!」
「うあ~!!」
「ゴホ!ゴホ!」
「息ができん~!」
「ゲホ!ゲボ!」
それだけではなかった。
ブロック一つ一つにギザ達が埋め込んだ石。
砕けた乾土から爆破と共に飛び出した数は数万。その勢いは弾丸となってオランダ兵の身体を撃ち抜いた。
「痛痛痛痛ッ~~!」
「逃げろ~!!」
バチッ!バチ!バン!バ~ン!
「走れ~!」
「あっちだ~!」
石の乱射から逃れたオランダ兵は北へ北へと城壁の周りを逃げ惑った。
『ヘレ~!!火を点けろ~!北側の葦に火を点けろ~!!』
ヘレは壺に入った赤く染まった黒炭を足で転がすと、それが乾いた穂先に火を点けた。
その黒煙混じりの炎は、葦のレールを今度は北から南へと凄まじいスピードで走り抜けた。
練り込んだ火薬は、城壁の裾にまたしてもドカン!ドカン!と巨大な穴を開けた。
腰を抜かした城壁は白煙と共にその場にズンと崩れ落ち、逃げて来た兵達を数メートル先まで吹き飛ばした。
飛び出た石の弾丸は、それを追いかけるように体当たりをかました。
「うわ~!!助けてくれ~!」
「痛たたたぁ~!!」
「俺達はカジュを採りに~」
「来ただけだぁ~!」
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ムルは宮殿の物見から、その凄まじい様子を窺っていた。
「薄い城壁。武器としての砦とは、、、こういう事か、、」
「爺。凄いね。怖いね。」
いつの間にか隣にギザがいた。
「さっ、ギザ!荷車の用意だ!!」
「わかった!ムル!怖いなんて言ってられないや!」