表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/345

静かなる内戦31~隙

 カマラ達一行は、カザマンス川から一旦逸れ休息をとるために、ニジェのいう湧き水の沼へと向かった。

 背を覆わんばかりの深いシダ、小さな島のような中洲だが、諸々の木や草が生い茂り、この先に本当に沼があるのかと思わんばかりの密林だ。


【たった四日前に来たばかりなのに、あの時踏みつぶした草の跡さえないや。】

 ニジェはそう思いながら草を掻き分けた。

  


 『おい!ファル!』

カマラが後方にいたファルに叫んだ。

『年寄りは連れてこんでいい!』

 『えっ?』

『そのまま川べりで待たせておけ! 面倒だ! 川の水でも飲ませておけ!』

 『では、わたしは見張りを?』

『お前は戦力じゃ。来い!』

 『はっ!』


 

 

『よいわ、お前はゆけ。カマラのやりそうなことじゃ。』

一人の爺がそう言った。

 『そうじゃ、わしらはここで上を向いて雨水でも飲んどるわい!』

もう一人の爺がひねくれてそう言ったが、ニコと笑い直して心配するなと言わんばかりにファルの尻を叩いた。

 

 『すぐ戻る。』

ファルは爺達のことが気がかりではあったが、

   

  内心【しめた!】

と思った。


まさか、この行軍に年寄りまで連れて来るとは思っていなかったからだ。

    

   爺達には何も伝えていないのだ。


 

『しかし、深いな。足が傷だらけじゃ。』

 『もうしばらく。』

ニジェはカマラに言った。


   と、その時、前がひらけた!

      『沼だ!』


  

   『お~う!ここか!』

カマラは沼をグルリと見渡した。

『ここからでも透き通っているのがわかる。』


 『見事な沼でございましょう!』


『よし!皆!飲め!戦う力を蓄えよ!』


 雨と湿地を、歩き続けた身。 

若衆たちは10の子供らさえ振り切って我先にと水辺へと走った。

 

  

 若衆たちは水辺まで来ると両手で掬うものあり、水面に顔ごと突っ込むものあり、はしゃぎながらゴクゴクとその水を飲んだ。

 

 しかしカマラだけは疲れを微塵にも出さず、水辺へとゆっくり向かった。

愚かな民とは違うと言わんばかりに。

 



『うううぅ~!』


 一人の若衆が呻き声をあげた。

そして口から水を噴水のように吐き出した。


そしてまた一人。

『おぅえ!』『うわあ!』

更にまた一人と、

悲鳴を上げながら、次から次へとバタバタと倒れ出した。


『おい!どうしたというのじゃ!おい!

  なんだ!毒水か!ニジェ!なんだこれは!』

 

 しかしそのニジェすら、バタとうつ伏せに倒れていた。


  【これでは戦えんではないか!】

カマラの顔は蒼白になった。

 後ろにも眼があるというあの隙のないカマラは棒立ちになった。


   その時だった。

  カマラの後方でファルが弓を引いた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ファルの弓矢は、カマラを射抜く事が出来るのかな? どうなるのかな? 水を飲んだ人達は、多分、、、だと思うけど、違ったらどうしよう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ