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殺戮と滅亡 78~神の御言葉

 むっくりと起き上がったのはヴィンセントであった。


 「では、そろそろゆくぞ。支度をせい。」

木々の葉の隙間から見える天空にはまだ多くの星が残っている。

いくつもの修羅場をくぐり抜けて来たヴィンセントには、時計無くしても朝を迎えるのは分かるのであろう。


 「案内しろ。民家のあるところまで。」

「はっ!」


 「俺が思うには、フランス軍が言っていた疫病と言うのは通って来た廃墟の村の事。しかしフランス軍は総攻撃を受けた。きっとだが、それがこの村の部族の者。他に可能性は無。もしおったら、ぬかるんじゃないぞ。徹底的に叩きのめせ。」

ヴィンセントは大声を出すでもなく、少しばかり笑みを含んで淡々と続けた。

 

 「恐れるな。慄(おのの)くな。最強の味方。神がいつもそばにおいでになる。」

それは、聖書。キリストの言葉であった。


 風はパタと止んでいた。

夜行性の獣の吠えは地中深く埋もれ、代わりに地上高くの目覚めた鳥が朝が近いとギャァと一声上げた。


兵達は両足の軍靴をパタパタと、付いた夜露を叩(はた)いた。

濡れたズボンの尻は丸く湿っていた。


荷物を背負うと、皆右手に拳銃を構えた。


   「では、参るぞ!」

ヴィンセントの脇の下には濡れた子猿の毛が付いていた。



 ーーーーーーーーー


 


 パルマランの少尉、アランには聞きたい事があった。

巨大なワニ。マム・ジャーラの事であった。


「ワリ。悪いがマンサ様に伝えてはくれないか?ワニの事だが。」

ワリは頷(うなづ)くと、マンサにその旨(むね)を伝えた。


 『なんだい?アラン。』


「ファル様とサバ様が、大きなワニの話をしていたのですが、、なにやら左腕を持って行かれたとか?」


 『ああ、大きなワニだったよ。あの時は心の臓が飛び出るかと思うほど辛かったが、今思うと左腕だけでよく助かったものだと。』


「話しておりましたよ。神に見返りに差し出した物だと。」


 『見返りではないな、、捧げた物だ。』


「我が国の宗教の神にこういう一説がございます。」


 『一説? 言ってみろ。』


「もしあなたの右の眼が罪を犯させるなら、その一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。

 もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ちない方が、あなたにとって益である。」



 『ほ~う。それはまさしく神とファル王様の関係。』

「その通りでございます。」

 『で、その言葉。なんという神が?』


「イエス・キリスト様でございます。」


 『私達の神も、アランの国の神も根っこは同じ様。』

「世界には色々な神が宿っておるようですが、、、」


 『きっと神は、この世にただ一人ではあるまいか?』

「はい、わたくしもそのように思います。」


 『それを言いたかったのか?』


「いえ、そのことではなく、、つまりぃ、、あのままではファル様の肩口。壊死を起こしてしまうのではないかと、、私達の周りよりも幾分ですが小蠅が多ございましたような、、、」









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