殺戮と滅亡 75~洞窟は地下運河・ハーンと操縦兵
「なあ、おかしいんだよ。」
蒸気ボートを操る操縦兵が言った。
「なにがだ?」
「ほら。」
「んんん?」
「なっ。舵輪が動かない。」
「間違えたんじゃないのか? 故障か?」
操縦兵とハーンはピクリとも回らない舵輪を見た。
「いや、そうじゃないんだ。右にも左にも寄って行かない。なっ、真っすぐに進んでいる。」
「なぜ?流れが強いから?」
「強ければ強いほど、どこに舳先が向くか分からぬのに、、真っすぐ。普通なら操舵しないとあちこちにぶつかるはず。転覆だってするさ。」
20の兵と、ブラルとバズを乗せた蒸気ボートは洞窟の川の中央を真っすぐにひた走った。
ブラルは舳先で腰を上げると水面にランプを翳した。
それをハーンと操縦兵は一緒に覗き込んだ。
「やっぱり!川の流れが真ん中へ真ん中へと寄るように流れている!」
「その流れの上にこのボートが乗っかっているってことか?」
「これは、、、」
「これは?」
「俺も伊達に船には乗ってはおらんよ。これはな、人の細工によるものだ。水底に何か方向を決める造りを施してある。」
「細工?これは人工洞窟ってことかい?」
「さっきから数えているだろ? その部族の二人が。」
「井戸とか言っていたが、、」
「井戸は地中を掘るもの。その地下水を汲み上げる。しかしこれは違う。ただの上からの穴だ。」
「言っている意味がわからぬ。」
「つまり、これは何千年か前に造られた地下の運河だ。」
「運河って、、そこまで言う?」
「カンビヤ川の東を滔々(とうとう)と行けばマリ帝国。その先はサハラだ。ヨーロッパから持ち出した物を船に乗せ、この洞窟を使ってカザマンス川より南に運搬するんだ。サハラ交易ってやつだ。」
「確かにこれを使えば、バンジュールやパルマラン、大西洋をわざわざ回り込むことなく最短で南に輸送出来るな。」
「だから、この日柱は井戸ではないんだ。着いた船がそれぞれの日柱からその物品の用途に合わせ、、」
「荷をそこから吊り上げた!」
「ほら、こんなに水面が上がっているのに、丁度船着き場のような小上がりが日柱の下にある。
そう、それはファルやマンサが休息にと上がった平らな岩の一つであった。
「では、この洞窟。これが本当の使い方という事か?」
「たぶん。」
「しかし、カザマンス川からの流れはどうなる?」
「そこだ。もしこれが地下運河だと計算したら、この水面はカザマンス川と水平、もしくは少し高くなる。」
「そのまま出れるということか?!」
「たぶん。」
「しかし、それでは一方通行。南からの荷物は?」
「ハハッ!この南。何がある?何が獲れる?」
「ただの密林。」
「したら、南からの荷物は?」
「何も無い。」
「一方通行の運河でいいのでは?」
「なるほど、、、」
地下湖を横切った。
「きっとこの上が、王の宮殿だ。」
「なぜわかる?」
「一番、荷物を多く下ろす場所。王の家であろう?」
「船が集結した場所か?」
「まっ、船と言っても筏のような物であろうな。」
カザマンス川までの距離。瞬く間に残り半分となった。
赤いラインが、北から南へ延びる洞窟
下手くそですみません