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殺戮と滅亡 70~城壁は武器?

 ニジェは宮殿正面。

くすんだピンクの城壁に梯子はしごを掛けると、その上段に上った。


 そのへりで、羽を休めてねぐらをと決め込んでいた鳥たちが一斉に飛び立った。

強い風に乗った鳥の群れは、斜めにあおられながら森の奥へと消えて行った。

 辺りはゆうのオレンジに染まっていた。


 西からの風を鼻に吸い込むと、ニジェはゆっくりと最上部の縁に立ち上がった。

目の前に広がる密林にはまだ、人の気配は無かった。

 

 カザマンスの民はディオマンシの元夫人達を除いては皆、宮殿内に立てこもった。

それぞれの家に戻る事こそ危険。

 部族として皆で戦う事の決意でもあった。

 

「ニジェや!ニジェッ!」

壁の下からムルが声を掛けた。

「この城壁だが。とりでというには、あまりに心もとない。これでは奴らが攻めてきたら、たちどころに壊される。大丈夫なのか、、?」


 『ふふふ。』


「丸太でもあれば、わしでも壊せる、、」


 『ムル爺。これは守りの為、防御の為の城壁ではないのだよ。』

「どういう事だ?ファル達を驚かせる為だけの壁であろう?」


 『それだけの為に、こんな途轍とてつもない物を造ると思うかい?』

「城壁と言うのは守るために造るものであろ?」


 『これはファル様と俺が二人で考えたのだ。ここまで奴らが攻め込んで来るのを想定してだ。』

「ファル王様と、、」


 『この城壁は武器だ!宮殿を守る為ではない!民を守るための武器なのだ!』

「わかった。信じよう。お手並み拝見じゃ。」



 『それよりもムル! 宮殿の奥に引っ込んでてくれ! 老兵はご無用!』

「おやまあ。手厳しい、、」


 『ムル爺はこのカザマンス王国になくてはならぬお方。絶対に殺られてはならぬお人なのだ。ファル様からも強く念を押されている。』


「ファル王様がそんな事を、、」


 『ファル様だけではない!皆そう思っているよ!』

「おう、、なんという、、」


 『だ・か・ら、さっさと引っ込んでてくれ!ハハッ』


 濃橙色の空は、その西から藍が包みだし、少しずつ銀の星たちが顔を出し始めた。

攻撃のとりでは淡いピンク色から濃紺のカジュ酒色に変わりつつあった。


 (夜襲やしゅうを駆けてくるかもしれない。)




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ヴィンセント殿。そろそろ宵闇よいやみが迫って参りますが、これではどれがカジュの木なのか明るい内でも分かりませんというに、暗くなっては更にであります。」


 『わかっておる。もう少し広い場所を見つけろ。これでは野営も出来ん。』


「わかりました!この辺り、探して参りましょう!」

 『迷わぬよう隊列を組んでゆくんだ。俺はここで取り巻き連中としばらく待機する。見て来い!』


ーーーーーーー


「おい、なんだ? 見えるか?」

 「ああ、この先、林がれている。広がっているぞ。」

「ん?家か?」

 「日が陰ってよくわからぬが、、」

「高床にあしいてある?」


 「数軒あるようだぞ。」

「ここに部族がおるなど聞いてはおらんな。」

 「来た道。ジョラの村が東の最後の部族のはず。」

「まだ奥にいたという事か?」

 「住んでおるのか、廃墟の家なのか?」


「ヴィンセント殿に。」

 「報せねば!」

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