殺戮と滅亡 69~カザマンス王国!戦闘配備!
『これよりカザマンス王国は臨戦態勢に入る!!戦闘の用意だ!怠るな!生き残れるかどうかの狭間!!限りを尽くすのだ!!』
ニジェは気勢を上げた。
『コリ!メッサ!サニヤ!ロダ!セグ!ヘレ! 配備について準備を! もう「様」や「殿」はつけぬで良い! 言葉の時間さえ勿体ない!』
「わかった!ニジェ!」
『ギザ!お前はアフィやエザと宮殿の奥へ! 年寄り達も頼んだぞ!』
「ガッテンだい!!」
『コリ!お前はその長い葦の紐に火薬を摺り込んでくれ!女衆皆で!』
「凄っい長いだろ?わたしとエザ、それにエザのママと作ったの。」
アフィがそういうとコリはニコと笑って頭を撫でた。
『メッサ!サニヤ!宮殿裏の倉庫から火薬を持って来てくれ! 気をつけて。レノー殿から頂いた大事なもの。』
元ディオマンシの夫人達6人と女衆は、葦の紐にその火薬をゴシゴシと摺り込むと、城壁内側の下、壁伝いに沿って、俵留めさながらグルリと取り巻く様に置いた。
『ムル!火を熾して置いてくれ!』
「ホイサ、ホイサのガッテン承知。」
『あとはぁ、、ディオマンシだ!』
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『おい!ディオマンシ!これを着ろ! 藁を編んで作った物だ!』
「なんでわしがこんな物を?」
『もうフランス軍が目の前に来ているんだぁ!』
「ギョェ!」
『よいか、俺の言う事を素直に聞くんだ。それを頭から被る。』
「はぁ?」
『もし、万が一ここまでフランス兵が来たら、この檻の柵を両の手で掴んで、有りっ丈の声で吠えろ。柵が折れてもかまわん! 喉が潰れるまで声を出せ!』
「声?」
『何でも良い!ライオンでも、ゴリラでも!ギャオォォォと雄たけびを上げるんだ!』
「わしが? これを着て?」
『ギザがついでに作った物だ。早く着ろ!』
「なんだ、ついでとは?なんのついでじゃ、、人を獣扱いしおって。」
『うるさい!黙っていう事を聞け! いいか!生きるか死ぬかの瀬戸際だ!俺の言う通りにしろ!さもなくば、お前をフランスの人質に出すぞ! 今お前は仮の王、丁度良いわ!』
「わかった、、」
『一回練習してみろ。それを着たら柵を掴んでぇ、、はい!どうぞ!』
「ガオォ、、」
『声が小さぁぁぁぁああああああい!!』
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ニジェは6人の夫人達を宮殿前に集めた。
『ロダ。カジュを持って参れ。カジュの酒だ。』
「そう思いまして既にご用意してありますわ。」
『ここからは我ら7人が最前線だ。もう誰にも頼れん。ファル様もマンサ様も、それにハラ殿やドルン。皆いないのだ。私達だけで戦うのだ。』
「言われなくても皆わかっております。」
『では、この酒。これが最後になるかも知れぬ。一杯酌み交わそう。』
ディオマンシの宝の倉庫から持ち出しだガラスのコップ。
青く透き通るカジュ酒がそこに吸い込まれた。
そのコップの中からは、這い出すような白き竜が立ち登った。
『最後の晩餐と青きカジュだな。』
ニジェが言った。
7人の座った脇には、色鮮やかに塗られた胸の辺りまで覆う三日月型のブビンガの仮面。
背中には、それも色とりどり。人の背丈ほどの大きな羽をたわわに背負っていた。
その7人の車座は、虹の7つの輪になった。
※「背丈ほどの色とりどりの羽を背負う」
ブラジルのサンバカーニバルをイメージして頂けたらと、、