静かなる内戦3
『他には?』
『その葦の原の先は断崖絶壁の山々。そこの少し小高い場所に洞がありまして、』
『洞?』
『奥から5人の男に担がれた王らしき者が現れたのです。』
『なぜ王とわかる?』
『はい、頭にディオマンシ様のような羽の冠を付けておいでになられました』
『で?』
『その夜は満月。なにやら呪文のような叫びを繰り返すと、また洞の中に戻って行ったのであります。』
ディオマンシは腕を組んで、しばし目を瞑った。
『お前、夢でもみておったんであろ?』
『いえ、私はこの目で確かに。私の体に付いている鳥の羽。その無数の水鳥が飛び立った時に付いたものであります。』
『ほう』
カマラはファルの首ねっこに付いた泥まみれの羽を、ペロと剥ぎ取った。それは人の指の長さ。
その羽についた渇いた土を指先でパパっと払うと、それは淡く薄い朱色を帯びた羽根であった。
『ファル。その水鳥は何色をしておった。』
カマラは聞いた。
『満月とはいえ、宵のこと。辺りは薄暗くて色まではわかりませぬが、この辺りでは見かけない足の長い鳥でありました。』
ドンゴはカマラの手にした羽を覗き込んだ。
しばし眺めた後、ドンゴが小さな叫び声を上げた。
『フラミンガ! これはフラミンガの羽だ!』
屈強な三人は顔を見合わせた。
『まさかっ、あの、伝説の民フラミンガ。フラミンガ族がおるというのか?』