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殺戮と滅亡 64~アクラの精霊。そしてサバ

「オランダ兵を戻すなら、こいつも戻しちまえば良かったですね。マンサ様。」

ワリはジルベールの肩をこいつだと言わんばかりに、人差し指でツンツンとつついた。


 「お、俺を戻してもらえるのか?」

「けど、オランダだよ。あんたフランス人でしょ?」


 「いや、この道を行くよりはよっぽど良いわ。」

「オランダ行ったら、あんたお縄だよ。監獄。」

 「、、、」


 「足手まといなんだよね~。歩くの遅いしさあ。」


 

 『こいつの事よりも、オランダ兵を抱えて行ったブラルとバズ。取って返して私達に追いつく事ができるだろうか?』

マンサは言った。


「まず無理でしょう。負傷したハーンとかいうオランダ兵を連れているだけでも時間がかかります。」

アゾが答えた。

 

 『だろうなぁ、、』


「しかし、このジルちゃんよりは早いんじゃないの?」ワリ。

「それは言える。」アゾ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー



 ファルはムルの家の前に立った。

数時間前にオランダ兵に掻き分けられ荒らされたはずの白い花。

そのモリンガの若木は、真昼の太陽を仰ぎ見る様にあっという間にスクと立ち上がっていた。


それはまるで、人格を持った植物。守るべきものを知っていたかの如くの早さであった。


 『ニジェが言っていた。きっとこれが、この中にレノー殿とアクラ殿の墓がある。』

「アクラはここに眠っているのか、、」

ファルの言葉にそう答えたのはサバであった。


 彼は幼い頃からアフリカの地理、この地の動物や虫、植物の事。宗教や教え。全てをアクラから学んだのだ。

 サバにとって、それは自分の身体に染みついた歴史のようなもの。

アクラは、王子としての品格を身に着ける為の大きな存在であった。


 

 『兄上。この花の中に入ってみては?アクラ殿がお待ちかねだと思いますよ。』


それを聞いたサバは空を見上げた。

「いや、いい。この墓はモリンガの花を持っての墓だ。そこを踏みにじっては行けぬ。」


 『この場所自体が精霊だという事ですね。』


「そういう事です。」


 『では皆、このアクラ殿とレノー殿の小さな精霊の森に一礼をして参りましょう。』

ファルはそう言うと、サバよりも先にその白い花の群れ達に深々と頭を下げた。


350の兵。この中にはこの地と関係の無い兵も沢山いたが、皆がそれぞれに頭を下げて前に進んだ。


それはまるで、ひつぎを覗き込みながら参列する、葬儀のようなものであった。


ーーーーーーー



歩き出してしばらく、ファルはこう言った。

 

 『この道を進むと、我々グリオの集会所と言うのがあって、、そこはもう、、ニジェに寄って潰されてしまった。フランス軍をそこでやっつけた。オレとハラはその火の手を見たんだ。』


「ファル様。あなた様も凄いが、マタ、、いやニジェも強者。私は誇れる弟たちを持ちました。」


 『いえいえ、兄上の奴隷としての生き地獄と比べましたら大した事ではありませんよ。』


ファルとサバは互いにニコと笑った。


 『あっ、話の続きですが、その集会所の手前。ンバイとマリマ、そしてこのオレ。

住んでいた家がありました。残っておるかは分かりませんが。』


 

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