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殺戮と滅亡 63~夕刻の2つの長い影

 この、空をも覆う密林には3人の影が出来る事はなかった。

ブラルとバズ。そしてオランダ兵ハーン。


 ハーンはこの二人に肩を担がれるように森林を抜けた。

言葉の通じない彼らに会話は無かった。

時折、ブラルとバズがハーンを気にするかのように、大丈夫か?と目で話した。


 ふもと近く。オランダ国旗が見えて来ると、うっすらとオレンジ色の光が差し込んで来た。


 バズはハーンの前で、大きく両腕を回し輪を描いた。そしてその両腕を前に突き出し両の掌を開いた。

両腕を回したのはマルーラの木を意味した。手の平を開いたのは止まるという意味。


 つまり、ハーンを送って行くのはマルーラの木までという意味であった。

ハーンはその微笑ましいジェスチャーに頬を緩めてうなづいた。



ーーーーーーーーーーーーー


 ハーンは一人、オランダ船に近づいた。

腰の辺りまで浸かった川の水は、ふくらはぎの傷に滲みはしたが、心地よかった。


 夕刻のオランダ船。船室と甲板デッキに、流れる様にパパッと灯りが燈った。


 「おーい!誰かおるかぁ~! ハーンだぁ!ハーンッ!」

彼はまだ先にある船に声を上げた。

 気づいたオランダ語の声に数人の兵が甲板に現れた。

船の留守番兵達だ。兵というよりこの船を守る整備兵達。

その穏やかな性格はこの部隊にあっては異色の兵だ。


「おー!ハーン!どうしたぁ?! どうしたというのだぁ?!」

 「中で話したいっ!」

「わかった!今タグを用意する!そこまで迎えに行くから待っておれ~!」


 ハーンは迎えのタグに乗り込むと、船体に取り付けてある長い階段を足を引きずりながら、抱えられていった。軍服はずぶ濡れであった。


ーーーーーー


「どうしたのだ?お前一人?」


ハーンという男。

ファルにこう言えと言われた嘘は全て消し去り、正直に話し出したのだ。


 「俺を撃ったのはヴィンセントだ。」

「え、なぜ?」

 「逆らったからだ。」

「奴のやりそうなことだが、、どうやってここまで?」


 「林の中で、死を待つばかりの俺をな。ここの部族の者達に助けてもらったのさっ。手当までしてくれたよ。」

「いたのか、、この地にまだ、、」


 「その中にな、ファルと言う王がいた。まだ若い王。片腕の王だった。その王がな、矢を持って自らの肩を突き刺した。これだ!」

「お~、この血のついた矢か? しかしなぜ刺した?」


 「これを持って、この地の部族にやられたと言えと、、、今にも襲って来ると船の兵に言って、オランダに逃げて帰れと。」

「それは誠か?本当は襲って来るのではあるまいな?」


 「違う。助けてくれておるのだ。生きてオランダに帰れということだ。」

「信じがたいが、、ヴィンセントがここに戻って来たら俺達はどうなる?」

 

 

   「その王は言っていた。ヴィンセントが戻る事はないと。」



「騙されてはおらぬか?」

 

 「さすれば、甲板に出てこの川の日が沈む方を見てみればよい。」


20の留守番部隊は、揃って甲板に出て、オレンジに波打つ下流を眺めた。


 そこには夕刻の日に揺れる2つの長く黒い影。

いそいそとフランス船の瓦礫がれきを片付け、船道を広げようとしている者があった。


  ブラルとバズであった。


 「わかるか皆んな。たった二人だが、それでも少しは力になるかと、、そう言って、、船の通り道を、、」

そこで、ハーンの涙が口を開かなくした。


「わかった。俺達も向かおう!」

兵の一人が声を上げた。

瓦礫がれきを撤去しよう!」



ハーンは流れた涙を、手の平ですくった。

 「この部族達はもう俺の敵ではない。敵はヴィンセントなのだ。」

※色々とございますが(活動報告に記載)なんとかいつも通り投稿させて頂いております。

 

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