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殺戮と滅亡 61~土器の壺

 肥やしとなったフランス軍の亡骸なきがらは、レンズ豆の花をりんと立ち上がらせた。


しかしオランダ軍の硬い厚底の軍靴は、その淡く紫に咲き誇る花を踏みつぶした。


 ジャリと感じる小石を踏みつける感触。

それは焼かれ、焦げ固まったレンズ豆。

 彼らの足元からは、真っ白な粉塵ふんじんが舞い上がった。


つると花に覆われた花壇の道は、白いもやと共に幻想的な風景に変わった。


「痛い!」

一人の兵の靴底に、グサと刺さる物があった。


「なんだ?」

兵は刺さった物を靴底からグイと抜き取り、手にかざした。


「ヴィンセント殿。これは?」


ヴィンセントはその兵から刃先を受け取ると、縦や横にし首を捻った。


 矢の先であった。

木製の柄は焼け落ち、黒光りした鋭い刃先だけが残っていた。


 「フランス軍の物ではない。間違いなくこの部族の物だ。」

ヴィンセントの頭の中は混乱した。


 疫病、移住、はたまた闘い。


 「お前。そこで足をバタバタとしてみろ。」

「はい。」


バタバタハタハタ


 白い砂塵がその兵の体を覆った。

ゴホ!ゴホッ!ゴホッ!

兵はその粉にむせた。


 「もしや?」

ヴィンセントは、口を塞ぎながらその場に屈んだ。

足元の白い粉を手に取ると、それは砕けた粉。

骨の砂であった。


 皆は、その花の蔓を引っこ抜いた。

ヴィンセントが、現れた砂山のような骨粉を手の平ですくうと、出て来たのはトリコロールの徽章きしょうであった。


彼のかかとに、コロと当たったのは、白く透き通るドクロであった。


蔓を刈り、周りを見渡すと、辺り一面が骨の道であった。

(フランス軍が言っていたのは、本当であったのか。奴らはここで、この地の部族にやられたのか。)


「本当にフランス軍は、ここで殺られたようですね、、」

 「ああ、本当だったようだ。」


 


 彼らは白濁の砂煙の中を、宮殿入り口へと向かった。

既に、扉はなく、伽藍同がらんどうのその中は丸見えだった。


先に足を踏み入れた兵が振り向いた。


「ヴィンセント殿、、、」

 「なんだ?どうした?」


「見るまでもございません、、、」

 「ん?」


「この花畑どころではありません、、、」

 「死体か?」


「数百は、、、」

 「なにぃ!!」


ーーーーーーーー


ここで、ニジェやガーラの弓矢に討たれたフランス兵は補給兵の50人ほどだったはず。


このオランダ兵がなぜ数百と言ったのか?


 それはフランス兵がここで呑み散らかしたカジュ酒の入った土器の壺。

焼けた壺もまるで、彼らのドクロのように目に映った為であった。



 「数百、、、」


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