静かなる内戦29~ディオマンシと夫人
ディオマンシの宮殿。
雨は上がっていた。
着飾った王妃と呼ばれる6人の夫人がそれぞれお供を一人ずつ引き連れ、宮殿の扉を叩いた。
『ディオマンシ様、ディオマンシ様、サニヤでございます。』
『おー、サニヤ!久しぶりだ!』
サニヤは3番目の夫人だ。6人の中でも一際背が高くスラとしていた。
『まあ、入れ。』
『失礼を致します。』
『おうう。これはまた綺麗な腰ひもじゃの。お前が編んだのか?』
『もちろんですとも!麻と稲で組みまして、そこにトウモロコシの毛をあしらいました。』
『その綺麗な色は?』
『ベリーで染めましたのよ。』
『ほう、それでわしの腕輪でも作れぬか?』
『よろしいのですか!喜んでお作りいたしますわ!』
その後もぞろぞろと夫人達がカジュの酒を持ち寄って、王の扉を叩いた。
最後に入って来たのはいわゆる第一夫人のコリだ。
『お久しぶりでございます。』
『おう、来たかコリ! 入れ!入れ!』
コリはお付きに持たせていた籠を見せると、
『私がディオマンシ様のため、お作りした首飾りでございます。』
『どれ、見せてみろ!』
ディオマンシは渡された籠からそれを手に取ると、自分の首にかけてみた。
それは水色の石をふんだんに使った、王の胸元を覆いつくすくらいの豪華な物だった。
『お前、これはどうした?どこで手にいれた石じゃ?』
『いいえ、それはベリーとモロコシを混ぜた染料を石に塗ったものでございまず。』
『なんじゃ、そうであったか!』
ディオマンシは笑いながらも満足そうであった。
昼間から宴が始まった。
『久しぶりじゃ、こんなに騒ぐんわ!今日はカマラも居ん、きな臭い話もせんでいい。
新しい土地も手に入るかもしれん。前祝いじゃ! 女ども! 唄え! 踊れ!』
夫人とお付きたちは競って唄や踊りを披露した。
ディオマンシはそれを眺めながら、カジュ酒の入った壺を抱えこむようにして、グビグビと口に運んだ。
いい気分であったが呑み過ぎたのかディオマンシの体は少しウトウト揺れていた。




