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殺戮と滅亡 58~下るオランダ軍「舐めてかかれ!」

 ヴィンセントは二つ目の高く険しい山。その密林の森を下り始めた。

もう眼下に見え始めるはずのジョラの村。

 ここで人が暮らしている形跡なのか、密集していた木々や草は徐々にその隙間をあらわにし、林の至る所に太陽の光が差し始めた。


 ジョラの民により、切り倒されたであろう大木。残された多くの切り株にはその年輪にそって新芽が吹いていた。

 昼間でも暗闇だったジャングルを抜けて来たオランダ軍に、その新緑のかおりと息吹が鼻を突いた。

 

 

泥沼の土から少し解放された軍靴は、湿地から乾燥地帯へと少しずつ足音を変えた。


 


 ヴィンセントは軍を止めた。

ここからの指示をするためだ。

もしかすると、この地のジョラは生きている。ヘトヘトの兵にもしばしの休息を与えた。


 兵は切り株の新芽を押し潰してそこに腰を下ろすと、湿気と夜露に乾かぬままだった軍服を脱いだ。

パサとその横の新木の細い枝に掛けると、濃紺の濡れた軍服に太陽光が降り注いだ。

 風の通り道になっていたのか、日の当たった濃紺の布はハタハタと揺れた。




 あごの腫れあがったままのヴィンセントは、一際大きな切り株の上に立ち上がると、オランダ軍旗を右手に掲げた。

 

 「良いかぁ!もう時期のジョラの村だ!いるのかおらぬのかわからぬ地だ。警戒はするが大した人数ではない。武器を持っておったとしてもオモチャの様な弓矢だ、、我が軍の目的はカジュ!」

 そういうとヴィンセントは軍旗で山の下、ジョラの村を指した。

 「フンっ、めてかかれっ!」



 オランダ軍兵達は腰を下ろしていた切り株から立ち上がると、パタパタとズボンに着いた泥やホコリをはたいた。

 彼らの尻の下敷きになっていた太く強い新芽も、兵と同じようにまた元に戻って立ち上がった。


 熱波の様相をていしてきた真昼の光と乾き出した風は、軍服のよじれをあっという間にピンと伸ばした。

 オランダ兵はその袖にパリと腕を通すと、その気持ちの良さからか俄然と力をみなぎらせた。


 

 ヴィンセントがこの地位にいる事。

それは獣のような性格とは対照的に、兵を操る切り替えがうまかった事だ。



ーーーーーーーーーーー

 


 ジョラの村。

それは彼らジョラの民達がフランス軍から逃れる為に、捨て去った村。

ディオマンシと共に大移動してしまったジョラはもうここにはいない。

その先、小高くもベリーがたわわに実る山。その奥地の密林に住処を構えた。


 

 誰も居なくなったその村の小さな砦となっていた寂れた家。

すでに屋根はなく、獣にかじられたスカスカの柱だけが4本立っているだけであった。


時折吹く強い風が、徐々にその柱を削っていった。


 そう、霊媒師ムルの旧家だ。



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