殺戮と滅亡 55~「わかっておるのか!目的を!」
「よいか。わかったかお前ら。俺に刃向かうとこうなる。丁度獣の餌になってよいわ。我らには目もくれず、小奴にむしゃぶりつくであろう。ハハハッ。」
兵は皆、汗と湿気で泥濡れた軍服の下、鳥肌を立てた。
「まあ良い。下の村を覗き見るのは、もう少し下ってからだ。」
ヴィンセントは時々隊列を振り返ると、銃を構え兵を脅しながら行軍を進めた。
兵の軍靴は足元に生える厚い棘のある葉と、落ちた尖った枝に絡まれ、到にボロ布のそれとなっていた。得体の知れないその植物は、小走りする彼らの軍靴を突き抜け、数歩に数度足の裏に刺さった。
「ここを下り切った所が、ジョラと言う部族の村だ。しかし問題はフランスのデマだ。」
「疫病に寄って壊滅したとか、、、部族の者にフランス軍が焼き討ちにあったとか。でありますね?」
「そうだ。だがそれはおかしい。フランス軍は下手な噂を流しおった。」
「確かにその通りであります。ヴィンセント様のおっしゃる通り。」
「疫病で壊滅したと言っておきながら、焼き討ちに遭う。もしこれが全て嘘であれば?」
「はい。ジョラは生きているということになります。」
「その通りだ。しかしな。この部族。おっても数百人。銃を持っておる班の頭の弾だけで用は足りる。俺達の目的はカジュだ。」
「おっしゃる通りでございます。」
「して、この書に寄ると、カジュはこの下にある村には存在しない。その向こう。この山々より低い、丘の様な山があるらしい。その先の湿地のジャングルに生えておるらしい。」
「村では無く、その先?」
「ああ、その湿地の密林奥深くだ。そこでカジュの実を採り、乾燥地帯のジョラの村に持ち運んでは酒造りをしておったそうだ。まあ、古い書物だ。今もそのような生活をしておるかは分らんが。」
「では、もしそのジョラと言う奴らがこの下の村にいたら?」
「まあそうだなぁ。数人。カジュの酒の在処と作り方、それにカジュの生えておる場所を聞き出さねばなるまい。そうだ。数人。」
「で、あとの連中はどういたしましょう?」
「は?」
「奴隷としてしょっ引きましょうか?」
「は?」
「えっ?」
パシ!
ヴィンセントはその兵のベレー帽を手の平で叩き落した。
「お前。俺の話を聞いておるのか?」
今度はその兵の頬っぺたを抓った。
「目的は?!ここに来た目的は?!」
「あ、はい。カジュをせしめに、、」
「だったら、ジョラの民などに用は無いであろう!!」
「はっ!」
「邪魔になるだけだ、、わかっておるな?」
「、、、」
「皆殺しだ。」