静かなる内戦28~沼
雨は止んだ。空はまだ曇天だ。日はまったく当たらない。
ニジェは列の先頭で、沼に通じる入り口を探していた。
しかし、頼みの綱があった。
曇り空、それを探していた。
『カマラ様、雨も止んで休息をとるには丁度良いのですが、、』
『なんだ? 場所が分らんのか? 』
『日が差せば、すぐにわかると思うのですが、、、少しゆっくり歩いて頂いてよろしいでしょうか?』
『ゆっくり歩けばわかるのか⁉ 』
『わかるかどうかわかりませんが、、ゆっくりと。』
ニジェは川辺の覆いかぶさるシダを左手でかき分けて、何か探す風に歩いた。
【どこだ、どこだ。どこだぁ。この辺りが見た景色なんだがなあ。その辺の草をむしったんだがなあ。】
するとシダが割れた隙間から、
『あったぁあ!ここだ! 』
そう、ニジェはあの時ドンゴに笑われた。しかし、帰りに沼がわかるよう投石用の石を三つほど重ねて、沼に通じる場所に置いて来ていたのだ。
【まさか、見つかるとは!】
『カマラ様!ここです!ここです!この奥です!』
ニジェは、ホッとした。
それはカマラの為ではなく、ジョラの民、あるいは自分自身の為でもあった。
『道はあるのか?』
『いえ、パプ様とドンゴ様と草むらを掻きむしって中に入りましたので。道は、、』
『まあよい、ニジェ、先をゆけ。若い衆と一緒にわしの前に道を作れ!』
『はっ!』
『おい!そこの勲章持ち!お前もニジェと先をゆけ!』
『はっ!』
ハラもニジェの後ろに付いて道を開いた。
ハラに続き、他の若衆も連れ立ってカマラの前に道を開いた。
『ニジェ、よく見つけてくれた。』
『ヒヤヒヤしたよ。ここが見つからなきゃ何ごともオジャンだったからね。』
『おい!お前ら!何をしゃべっておる!早く道を開けろ!』
『ほんと、カマラは抜け目ねえ。前にも後ろにも眼がある。』
ハラが小声でニジェにつぶやいた。




