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殺戮と滅亡 38~オランダはその道を知っていた

 ファル達がマルーラの木の下、モリンガの道に踏み入る半日前の真昼の事だ。


 オランダ海軍の兵を乗せた20艘が、ここマンディンカの裏手、カンビヤ川に波しぶきを高々に上げ上って来た。


 彼らはそこにフランス国旗を掲げた船を発見した。

 浮かんでいたのは4艘。2艘は機帆船。もう2艘は蒸気船。


御都合よくオランダ軍はこう読んだ。


 機帆船はジルベール軍の船。蒸気船はダカールからこの地に引っ張って来た奴隷を乗せた船だと。


 船を近づけ発砲を仕掛けたオランダ軍だったが全く反応がない。


誰も乗ってはいないとふんだ彼らは一気に砲弾をぶち込んだ。


 しかしオランダ船17艘は、自らが撃ち込んだその機帆船の瓦礫の山に行く手をはばまれた。

先に回り込んでから、砲弾を撃ち込んだヴィンセント中尉率いる先頭部隊の3艘だけしか、その先の上流に向かう事が出来なくなっていた。


 「マンディンカには我が軍1万の兵。相手はたかだか400。既に何の苦も無くフランスを制圧したであろう。しかも奴らが逃げ延びる手段の船もぶっ壊したのだ。もう奴らは船は使えぬ。逃げる事すら出来ぬ。わしらはあとはカジュをいで来るだけ。3艘1500の兵で充分過ぎる。ヴィンセントに任せれば良い。」

 

オランダ海軍の長、オールト少将はそのむねを、ヴィンセントに告げ、17艘はカンビヤを折り返した。


ーーーーーーーーーーーーーー

 

 『まだこの辺りにいるかもしれない。ここからは足音を立てぬよう。』

マルーラの木の下をくぐると、そこからは緩い上り坂。月明かりに照らされた最初のモリンガの木を見つけた。


 『皆、覚えておけ。これがモリンガだ。』

その木の合間から、眼下にオランダ船が見えた。マルーラの木の下では1艘に見えた船だったが、その前に2艘、同じ風貌の船が、所々あかりをともし停泊していた。人影はほとんど見当たらず、数人が甲板デッキの上をウロウロとしているだけだった。


「ファル様。もう、このオランダ部隊は先に行っておるようですね。」

 『ああ、兄上もそう思われるか?』

「しかし、マンディンカの制圧だけでは気が済まぬのか? こんな奥地に来たって何もないぞ。」


 

 『、、、あるじゃないか。カジュだ。

フランス軍、バスチアがジョラに攻めて来た時。目的は奴隷ではなくカジュであった。きっと小奴らも何か情報を得たに違いない。』


「確かにそれ以外理由はない。」


ーーーーー

 


  「ファル様。この道、雨の後に誰か通っています。」

千里眼がファルに向かって、足元を指差した。

まだ、大雨の名残。泥の道には押しつぶされた葉が一列に並んでいた。


 連なる大きな軍靴の跡であった。


 『なぜ、知っているのだ?この道を。』



 

 オランダは知っていた。

この道はこれより、時として800~1000年前。

砂金や塩、奴隷売買の道として、当時のアフリカ人商人とヨーロッパ人入植者で作られた道。

サハラ交易におけるマリ帝国から西アフリカを繋ぐルートの一部。


そう、そのヨーロッパ人とはフランク王国。つまりネーデルランド。オランダ人であった。

※サハラ交易

カザマンス〔THIRD〕マンディンカ闘争16に簡単ではありますが(本文中)説明があります。

宜しければご参照ください。

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