殺戮と滅亡 36~モリンガの道を知っておる者
「ファル様。急がねばならない。」
『しかしまだ、マンサ達が。』
「どうする?先にゆくか?」
『急いだほうがいい。誰か洞窟の出口でマンサ達を待って伝えてくれ。』
「カロ、ダラ。お前らに頼む。俺はファル様とそろそろ出揃う350の兵を連れてオランダの後を追う。」
『遅れて来ても下にはマンサも、ハラもドルンもおる。心配はない。』
「しかしオランダに追いつく事ができますか?」
カロが言った。
『船はこの先を行けば、葦にも止められきっと座礁してしまう。そこで下りても道がわからぬはず。オレ達はモリンガの道を知っている、、が、、あれ、、ガーラもハラも洞窟の中、?』
「モリンガの道を知ってる者はおらんよ、、ファル様はご存じない?」
『オレはカザマンス川を下って来たので、、知らない。この土地すら初めて。』
「えっ。じゃあ、誰も? モリンガの木を知るバブエも地下だ!」
『兄上。洞窟の道はだいぶ時間を要するのか?』
「ああ、俺達の倍は。マンディンカに向かう時など、一つ一つの井戸の上、間違いなく通過できるか声を掛けて待っておったんだが、待ちくたびれるほどだった。」
『上を歩くようにはいかんしな。しかしハラかガーラには、いち早く洞窟から出て来てもらわねば。』
「どうするか?」
『ん~。』
ファルは考えながら、もう一度ジャブジャブと川に入り、葦の倒れている方向を確認しに行った。
葦は間違いなく、カザマンス王国の方角。穂先を東に向けて倒れていた。
「どうされたんですか?」
てんでに走って来た地上部隊の350が次から次へとその河原に集結した。
『船がやられているんだ。』
ファルが皆に伝えた。
「えっ、あ!本当だ!船が滅茶苦茶に潰されている!」
『オランダ軍らしい。』
「ファル様!すぐに追いかけねば!」
『追いかけるならモリンガの道。しかしわかる者がおらん。』
ザザザっ
「なになに、なんですか?」
兵の後方から割って出て来た男がいた。
『えっ!お前なぜここに!』
千里眼であった。
「はいはい、ハラ殿に言われまして。せっかくのお前の眼。洞窟では本領を発揮出来ぬから、どうせなら上を行って、ファル様のお役に立てと。ハラ殿が洞窟に降りて来ると同時に入れ替わり、このわたくしが上に。で兵の後ろをついて参りました。」
ファルは両手を叩いて喜ぼうとしたが、右手だけの彼は横にいたサバの肩を叩いて喜んだ。
『では、わかるな!モリンガ!』
「はい!もちろん!この千里眼。この二つの眼。誰よりも鮮明にみて参りました。モリンガの道。」
『でかした千里眼!、、、でかしたハラ!』