殺戮と滅亡 32~ムルとニジェ・ちょっとディオマンシ
「ニジェ。この途轍もない城壁だが、すぐに崩れやしないかい? ただ泥を塗り固めた物を積み上げただけ。芯棒も入ってはおらんし、宮殿の壁にしては薄すぎる。」
ムルがニジェに尋ねた。
『いや、いいんだ、いいんだ。見掛け倒しで充分。ファル達が戻って来たら驚かせてやりたいだけだ。ハハッ。』
「ま、皆が楽しそうにしておるから良いか。いくらかでも不安が紛れれば良いの。」
「おーい!ニジェ~!」
話をしているニジェとムルに、城壁の上から顔中泥まみれのコリが声をかけた。
「ここからどうするぅ~?」
『えっ、どうするって何がぁ~?』
「そこそこぉ~!」
『あ~、ディオマンシのおる檻かぁ、、』
「檻は壁の内側に入れるのかぁ? それとも壁の外ぅ?」
「おいおい!!何を言うておる~!!」
コリの真下にあったのはディオマンシのいる檻。
その格子を両手で掴み、場繋ぎの王は吠えた。
「中に決まっておるであろう~!馬鹿を言うでない!」
「お前には聞いとらん!私はニジェに聞いとるんじゃ!この薄抜けジジイ!」
『どうするかなぁ、、ファル様が言うには、一応今だけ王みたいだしなぁ、、』
「ニジェ!何を考える必要がある!砦の中に決まっておるであろうが!壁の中じゃ!」
『、、、あ~。』
「一人だけ茅の外では、、、寂しいわい、、」
『では、コリ様にお任せします!』
「ダメだ!ダメだ!ニジェ!お前が指示をしろ! コリなんぞに任せたら、壁の外だぁ~。」
「なんぞ、、ん?今何て言った? 「コリなんぞ」、、、はい!城壁の外に決定!!」
「はぁ~?」
「では、ニジェ殿。この檻を避けて壁を作って参りま~すッ!」
『好きなようにやってくれ!』
「お前ら、、、」
ーーーーーー
「で、ニジェ。ギザは何をやっておるのだい?昨日まであんなに泥と戯れておったのに。」
『ムル殿。ギザは器用であり天才気質。俺がちょいと頼みごとをしまして、葦の葉で。』
「葦で何を?」
『出来た折りには、ムル殿に御祈祷を願いたい。」
「祈祷?」
『はい、魂を入れて頂きたい。』
ーーーーーーーーーーー
淡いピンクに染まった城壁の上の細く長いテラスには、朝と夜と問わず無数の野鳥たちが集った。
宮殿をグルリと取り巻いた囀りは、風の音さえも奏に変えた。
その歌を聞いたこの部族のグリオが、時折バラフォンを取り出し、それに合わせる様に唄った。
セセと働く民の力に変えた。
城壁の上を埋め尽くした鳥の糞は、その壁を更に押し固め強固にした。
ーーーーーーー
『いいじゃないかぁ!ギザ。その調子だ。』
「そうかい?こんなもんでいいかい?」
『あ、そこはもう少しギュウと縛らねばならん。』
「こうかい?」
『そうだな。そんなもんで。で、まだまだ完成には時間は掛かるが、出来上がったら今度は大きな葉を採りにゆくぞ。捥ぎ取っても緑色が残るやつがいい。なるべく深い緑の葉だ。』
「枯れにくいやつってことだね?」
『そうだ。そういう事だ。』
「それをこれにペタペタと紡いでいけば、、そうか、たしかにそんなんになる。」
『だろ?』
「けど、こんなにでかくちゃ、ニジェと二人だけでは、、」
『ほ、寂しいかい?』
「そんなんじゃないよ。おいらはディオマンシと違うから。」
『アフィでも呼ぶかい?あの子は不器用だが、一緒にいるだけで楽しい子だ。それとぅ、、、そうだ!ナシャも連れて来よう!』
「なんだ、頼りにならないチビばかりじゃないか。」
『ま、そう照れるなって。ディオマンシとムルでは嫌であろうに。』
「それは、ご遠慮、ご法度、ご苦労様。」
『言葉も良く知っておるわ。ハハッ。」