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殺戮と滅亡 25~アクラの部屋の武器

 アランも続けて飛び込んだ。

この王だけは、この民の為、死なせてはならぬ。

何かあってはならぬと縄梯子の下で支え、見届けたら自分も登ろうと思ったのだ。


 アランは泳ぎながら考えた。


 なぜオランダがこの地まで介入して来たのか。

バンジュールから、必ずや引き返すと思った。

この辺ぴな土地、オランダには何のメリットもない。しかも高々、数百の兵。

 

 フランスとの南米植民地争いに勝ったのか、それとも負けてこの地の占領をはかったのか。

アランがパルマランを離れてからというものの、彼にはフランス軍の情報もオランダ軍の情報も一斉耳にすることはなかった。


 一つだけ気になる事があった。

それは、サバとバブエに聞いたカジュという酒の事だ。しかしその情報も自軍の機密性からしてオランダが得ることは難だと思った。


 


 アランが縄梯子の下まで泳ぎつくと、そこにはすでに、ドルンとアゾ、ワリもプカプカ浮いていた。

「アラン殿が飛び込んだのでな、通訳が必要かと思ってさっ。」

アゾが言った。



 

 ハラとガーラが天井のアクラの部屋に辿り着くと、地下に向かってハラが小声で言った。


「ファル様。準備はよろしいですか?」

かすかに木霊こだましたその声は、地下に難なく届いた。

 

 『大丈夫だ。上は大丈夫か?誰もおらぬかぁ?』

「はい、物音、声、何も。何の気配も。」

 『わかった。では引っ張ってくれ。』


縄梯子はユラユラと揺れながら、ゆっくりとファルの身体を吊り上げていった。


 その様子をアラン達は心配そうに眺めた。

400以上の兵が畔の周りでそれを静かに見守った。

マンサは手を組んで祈った。


片腕の力だけで握り締めたファルの右の手の平は、縄までも赤く血に染めた。


「あと少し。あと少し。」

ンバイとマリマも祈る様に言った。





縄梯子はギシギシと上がっていった。


「よし!!上がった!!」

ハラが小声の叫びを上げた。

地底から地響きの様な歓声が揚がった。

 

 びしょ濡れの身体。

アクラの部屋に引っ張り上げられたファルは、まるで甲板に釣り上げられた魚の様であった。



「おい!縄梯子を下ろしてくれ!!俺達も上がる!」

ドルンが地底から叫んだ。


「わかった!けどもう少し小声にしろ!響くんだよ!」


ーーーーーーーーーー  


 『ここが、アクラ殿の部屋? 凄い数の書物だ。』

「アクラ殿はフランス語もオランダ語も堪能。文字も書けたのでな。」

ガーラがファルの言葉に返した。


 『あれ?しかしなぜ見えるのだ?ここは宮殿の地下であろ?』


(あれです。あれ)

とでも言う様にガーラはアクラの部屋の天井を指差した。


灯り取りの小窓が付いていた。

  『では、バル王のいた部屋の床に窓が?しかし透けておる。これは?』

「ガラスってやつです。」

 『そういえばディオマンシの宝の中にこれと同じ湯飲みがあった。』

「素材は同じものです。」


 『マズいじゃないか、上からオランダにでも覗かれたら。』


「すぐ出ましょう。この右、この扉を開けると、上のバル王の部屋に通ずる階段があります。」

 

 『段数は?』


「10もありません。」


 『わかった。ハラ、ガーラ、ドルン、アゾ、ワリ。それからそのフランス兵、、』

「アランと言います。」


 『そっか。皆、銃の準備は良いか?』


「えっ!あっ!泳いで登って来たので、、誰も武器を持ってな~い!!」


 『あっ!オレもだぁ!』

「どういたしましょう?ファル様。」


 『ここまで来たら行くしかない。』


「ちょいとお待ちを。え~とこの辺り。」

 ガサゴソ

ガーラがアクラの書棚の隅をつついた。

「ほれ、あった。アクラ殿特製の弓矢。人数分はありましょう。」


    『神だ』

 

 



 『でハラ、なぜお前らの兵の中にフランス兵がおるか後で教えてくれ。』

ファルがハラにそう聞くと、ハラはウインクで返した。

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