殺戮と滅亡 22~再会。そして縄梯子を降りて来た男
『ファルだよ~!ファルぅ!』
王の声に皆、沸き立った。
互いの姿が見えぬ暗闇の中、悲鳴の様な声と笑いが木霊した。
ダカールから奴隷として時を費やし、サバやバブエ達と共にこの地に赴いた他部族の民も、救いの神カザマンスの王の登場に驚嘆の声を上げた。
『マンサ。ハラの部隊はかなりの人数ではないか?75どころではない声。』
「洞窟の中だから、響いてるのかしら?」
『全員無事かぁ~』
ファルがハラに問うた。
「は~い!全員!!誰一人! でぇ~我が部隊は350の兵になっておりま~す!事情はまた説明しますが、その中にファル様にお会いさせたい方がおられま~す!』
ファルの75の兵と、ハラの350の兵は地底湖を挟み、互いの顔が見えぬまま向かい合って立っていた。
「なんとっ!なぁ~んとっ!!
この中に、ファル様のお父上ンバイ様と、お母上マリマ様がおられま~す!!」
『えっ!!!』
「ファル~!ファルや~!」
先に叫んだのはマリマであった。その遠吠えの様な絶叫が、泣き声と共に地底湖の水面を揺らした。
「元気かぁ!!元気か?ファルぅ~!!元気であったかぁ~!」
ンバイが続けた。
『色々とありましたが、元気ですぅ~!父上様も母上様も御無事のようで~!』
ファルは見えぬと分かりながらも、ンバイとマリマに右手を振った。
涙が湖にポチャリと沈んだ。
「ファル!!お顔が見えん!早よ、こっちにおいで!!」
マリマがそう言うと、ファルはその湖に飛び込もうと片腕を後ろに振った。
「ファル様~!お待ちくださ~い!ちょっと待って下さ~い! 先にお聞きしたい事がぁ~!」
『なんだぁ~?どうしたハラぁ~?』
「カザマンスの水門。毒は流されましたかぁ~? もしそうであれば、今この中に飛び込むのは危険!あの大雨、地下に流れ込んでおるかもしれませ~ん!!」
『そういう事なら大丈夫だぁ!水門は閉じられていた!流せなかったのだぁ~!だからほれ!オレ達はここまで泳いで来れたのであろう~?』
「あっ、そっか、、」
『では、そっちにゆく、、ぞ、、んん?』
パカッ バッタン!! ギィ~
『んんん?』
「なんだ?この音」
ファルの部隊もハラの部隊も皆、音のする洞窟の天井へと目を移した。
ワリとアランが持っていたランプを上に翳した。
洞窟の頭上にあった板の蓋がパカリと開いたのだ。
それは地底湖の丁度真ん中辺り、
宮殿のアクラの部屋の床下の羽目板だった。
すると、地底湖まで垂れ下がっていた縄梯子がユラユラと揺れ出した。
『誰か降りてくるっ!!』
そのファルの声に洞窟の天井、縄梯子に足を掛けた男が叫んだ。
「誰だぁ!!貴様らはぁ~!オランダかぁ~!」
その男は、地下に無数のランプが灯っているのを目にした。
「あっ、あの声はぁ!!」
アランが叫んだ。
掲げたランプの先に、うっすらと水色の軍服が映し出された。
「ブルーの軍服を身に纏えるのはただ一人!!将軍!ジルベールだ!」