殺戮と滅亡 21~オランダ大将軍・猛毒を乗せた筏
『なるほど。』
「西アフリカから戻って参ったヤンセンという奴隷商人がそのように。マルセイユの監獄からデンハーグに移送されて来た囚人としておる者です。」
『ふふっ。ジルベール、、、奴の考えそうな事だわい。』
「では、どのように?」
『南米でのフランスとの戦いは既にわしらの勝利が確実だ。彼の地の植民地は手中に治めたも同然。』
「左様で。」
『して、今どこにおるのだ我が海軍の船は?』
「アフリカの西。ダカールとバンジュールの沖合。その近辺のフランス船を既に何艘か撃沈致しております。」
『わかった。では、南米行きは中止だ。変更を命ずる。その40艘。その1万の兵。マンディンカに向かわせろ!!』
「マンディンカへ!はっ!」
『ジルベールの首を獲って、そのカジュという酒。分捕るのだ!!』
「わかりました!アデベルト将軍!」
『我が軍は皆、大型の機帆船。バンジュールの港につけ、そこから陸路。西から真正面に体当たりしろ!マンディンカにおるフランス兵などわずかであろう! 正攻法で正面からぶち当たれ! 苦も無く勝利するはずだ!』
アルベルト。
それはオランダきっての大将軍であった。
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ファルとマンサ75の兵が、まだカザマンス川の洞窟入り口で雨止みを待っていた時の事だ。
水門近くの岸の大木に括りつけてあった5つの筏は、その豪雨にもんどりうった。
二コラと20の兵にくれた残り。5機の筏であった。
押し寄せる増水した波はその筏を竜巻さながら、グルグルと回転させた。
今にも横転し、転覆しそうであった。
その流れは、南から降りつける豪雨により、北を走るカンビヤのそれよりも凄まじかったのだ。
カザマンス川は、見る間にグングンと水位を上げた。
水嵩が増し、今まであった岸辺をその濁流が覆い尽くした時だった。
パカ!ド~ン!
その強い流れはいとも簡単に水門をぶち破った。
水門の先の土砂を掬い上げると、流れは一気にマンディンカへと向かった。
うねり狂った水は、大木と筏を繋いでいた縄をブチと切った。
5機の筏はグルグルとその渦の波に乗り、開いた水門を抜け、同じようにマンディンカの水路に吸い込まれていった。
しばらく流されると、1機の筏が水路の縁に競り上がり、ドカとひっくり返った。
その後方から流れてきた筏4機が次から次へクルリクルリと回りながら、ひっくり返った筏に衝突した。
5機は皆、転覆した。
5機は皆、猛毒アコカンテラを乗せたままであった。