殺戮と滅亡 20~宮殿の真下・バシャバシャ
「上で何かが起きている。」
ハラに呟いたのはアランであった。
「微かに地響きのような音がする。」
通訳のワリがそれを伝えた。
「みんな!聞いてくれ!ここが35の日の柱!次が宮殿の真下だ!ファル王様がカザマンスの川から毒を流しておるはず。流れはまだ南に向いておるがこの辺りからは水に降りるな!岩場に登り、そこを通る!一列だ!」
ワリがアランに通訳した。
それを聞いたアランは首を傾げた。
「ハラ殿。次と言いましてもそこは宮殿の真下。日柱は無いのでは?どこが宮殿の下なのか分からぬのでは?」
「あっ、、そっか。」
「大丈夫だ。」
ガーラがそれに答えた。
「今、皆が手にしておる鯨油のランプ。ゆっくりと翳していけば、天井から垂れ下がっている縄梯子が見える。そこが真下。アクラ殿がおった部屋の下。」
「なるほど。俺はてっきり日柱があるものとばかり。そうだな、そう言えば上は宮殿だもんな。」
ハラは続けた。
「ンバイ様!マリマ様!前へおいでになって下さい!少しでも早くファル様にお目に掛けたい。一列だと長い列になってしまいますから!
それともう一つ! 肝心!! 何か地上で異変が起きているようだ!爆発の様な音!ここからはシカと注意して参るぞ!」
「おぉおぉー!」
とは言ったものの皆、不安に駆られた様相で岩場に上がった。
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直後だった。
上からの地響きの音を打ち消す音がした。
ハラ達が向かう前方からのようであった。
バシャバシャバシャ
バシャバシャ
「音がする。」
ガーラが言った。
「水を掻く音。」
「千里眼、暗闇だが何か見えるか?」
ハラとガーラは千里眼を先頭に呼び寄せると、前方にランプを翳した。
「いや、いくら私の目がいいと言いましても、この闇では、、」
「上の状況からして、ファル様とは限らん。獣の可能性だってある。」
と、その翳したランプの先に、上から垂れ下がっている太く頑丈な縄梯子。
千里眼の目にうっすらと映し出された。
「あれ?ここだ!ここが宮殿の真下。」
「あっそうだ。35番目の井戸は宮殿の敷地の中だった!」
ガーラが苦虫を潰した顔で言った。
見えた縄梯子の下は直径10メートルはあろうかという大きな地底湖になっていた。
その奥の真っ黒な闇からはまだバシャバシャという音がした。
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『おい!マンサ!前を見ろ!!灯り!沢山のランプの灯りが灯ってる! あれだ!あれはハラ達に間違いない!!』
「ま~なんて綺麗な!」
『そんな事を言ってる場合じゃないよ、、』
「ファル様、わたし声を掛けてみるわ!」
『敵。フランスだったらどうするよ?』
「ありえません。」
ファル達の兵は泳ぐのを止め、その場にザバと立ち上がった。
「お~い!ハラかぁ~!部隊長ハラ殿かぁ~!!」
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「あっ!!あの声は!マンサ!マンサ様だぁ~!」
ハラ達の兵は沸き立った。
「そうでありま~す!!ハラです!ハ~ラぁ~!」




