静かなる内戦25〜フランス軍
『ロドルフ、どうしても酒が欲しい。カジュの酒はまだ手に入らんか!』
『しばし。』
『軍から送ってくるのはいつも芋と水ばかり、俺は辟易としておる。』
不満を洩らしていたのはこの軍の最高責任者ジルベール将軍であった。
マンディンカを制圧していたフランス軍は、1000余の部隊をその王の宮殿に配置し、二年近くもここに滞在していた。先鋒隊300人をジョラの制圧に向かわせていたが、目の前の広大な湿地帯と高くそびえ立つふたつの山に、道を開きながらの行ったり来たりの繰り返しであった。
二ジェが王族の人間だとしたら、これを越えてきたとは思えないファルの理由も分かろう。
ジルベール将軍がジョラの制圧に躍起になっていたのは、白く濁ってはいるが、甘い葡萄酒のような香りがするというカジュの酒をどうしても手に入れたかったからだ。
『一儲けしたい。我が国に持ち込めば必ずや、喉から手が出るほどのシロモノになるであろう。』
『先鋒隊はどこまで行った?』
『はい、想像以上に湿地がきつく、軍もバラけてしまったそうでありますが、今はふた山目の尾根を行軍中とのこと。しかし、兵も疲れ切っておりまして、後追いの兵士と補給部隊を待ちながら、しばらく休息をとるとの連絡を中尉殿から。すでに、3日前の事でありますが。』
『まあよい。そこまで行ったならゆっくりせい。
もう30ほど食糧班を送り込んでおけ。食べ物は切らすな。確実にな。』
『それはバスチア中尉殿も喜ばれるに違いありません。』
『まっ、ジョラに下れば食糧は手に入るだろうが、、なにしろ、家畜もおるし田畑もあるらしいからな。カジュ酒も手に入ったようなもんだ。』
ジルベールは椅子から立ち上がり、窓の外のバスチア中尉のいるであろう山を眺めた。
『ようやく山を越えるか、、』




