殺戮と滅亡 19~火の手
サバは井戸を通過する度に、連れて来たカロに地下の洞窟に向け声を掛けさせた。
カロは井戸を覗き込むと有りっ丈の声で叫んだ。
「おーい!もう来たかぁ~?!どこまで来た~!?」
「おー!もうすぐその井戸の下だぁ~!」
地下までは深かったが、上からの声も下からの声も、空気が揺れるほど、大きく木霊した。
30番目の井戸であった。
上からの声に何の返答も無くなった。
「サバ様。ハラ殿達の返事が返ってきませんね、、どうかしたのかな?」
『宮殿に近づくにつれ、地下の川が深くなってきているのかもしれない。』
「なるほど。」
『少し待ってみるか。 カロ、お前時々洞窟に向かって声を掛けてみろ。』
「ガッテン!」
彼ら地上部隊がゆっくりとその場に腰を下ろした時であった。
ドッゴーン!!バリバリバリ~!
ド~ン! パンパンパ~ン!
「なんだ!!この音はぁ~!」
兵達は、すかさずまた立ち上がった。
「爆発音だ!」
ブラルが叫んだ。
『どうしたというのだ!マンディンカはもう近いというのに!』
サバが目を見開いて南の方角を見た。
その音を聞いたカロとダラが、何度も地下の兵を呼び続けた。
「おーい!!ハラ殿~!いるかぁ~!ハラ殿ぉ~!」
「まだ着いてはおらぬか~!いたら返事をぅ~!早くぅ~!」
「ん?なんだ?いやにしつこく呼んでるな。」
ハラ達はようやく30番目の井戸の真下に到着した。」
「なんだ~ぁ!今、下に着いたぁ~!どんどん水が深くなって大わらわだぁ~!早くは進め~ん!」
「ハラ殿かぁ~! 今!今!今! 上で大きな爆発音が~!!」
「エ~!なんだって~!!爆発ぅ~!」
「とにかく、ここで武器を上から落とす~!何も持っていないのは危険だぁ~!」
「わかったあ~!」
「うまく受け取ってくれよー!」
カロとダラは、サバの命令で井戸の上から、銃と弓矢をホイホイと放り込んだ。
ヒュ~ィヒュ~ィ
「あッぶね~!」
洞窟の上から大雨の如くに沢山の矢が降って来た。
「おい!お前ら俺達を殺す気か~!矢に刺さっちまうわ~!一本一本投げろや~!まったくぅ!」
ハラの声が洞窟内に響いた。
「銃と弓矢は別々にだぁ~!」
ハラの怒鳴りに、ガーラも追い討ちをかける様に上に向かって怒鳴った。
それでも上からは、見境なく武器が落とされた。
「ハラ殿。なんか凄く慌てているな。上のもん。」
「ああ、爆発音って何だろう?」
「ファル様が俺達と合流する前にフランスに仕掛けるわけはない。」
「となると、途中フランス兵にでも見つかって、ドンパチ始まってしまったのか?」
「ここにいては、わからん。上にいるサバ様達の情報を待つしかない。」
「とにかく、急がねばならないようですね。」
「ああ。しかしこう水が多くては、、」
「泳ぎましょう!流れはマンディンカです!」
「あっ!その手があったか!、、、ん?しかし、武器を持たされてしまったぞ、、」
「そうでありました、、しかし、、とにかく急ぎましょう!」
地上にいるサバ達は見た。
南の空。マンディンカから沢山の火の手が上がっているのを。
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そこからサバ率いる地上部隊との連絡は一切つかなくなった。
途絶えてしまった。
ハラ達には何が起きているのか、一向に分からなかった。