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殺戮と滅亡 17~いつも水の上・マンサの水鉄砲 

洞窟の底を流れる川。

 ファル達は乗って来たいかだり部分から外側を切り、その丸太の残骸を手摺りの上に載せ屋根とした。

 

 銃と弓矢を運ぶための物であった。水を泳ぐ彼らには武器を個々に装備する事が出来なかったからだ。

屋根を付けたのは洞窟天井からしたたる雨水を警戒する為の物。

銃を水に浸ける事は出来ない。弓矢も乾燥を持って飛ぶ。


その小さないかだの両側を縄で結び、ゆっくりと地下の水面に下ろした。


 

 いかだを流す事は容易であったが、兵達より先に流れるのを抑える事に手を焼いた。

時々左右の岩にゴツと当たると回転してはまた流された。

いかだの周りを支えながら泳いでいた兵も、一緒にグルリと水面を廻った。


それは自分の何十倍もある葉を運びながら水溜まりに流される黒蟻の如くであった。



 泳法を知らぬ彼らはただ水の上をバシャバシャと、マンディンカの宮殿の地下へ向かって流れて行った。


 


地上に残った雨水は、鍾乳洞のツララからポタポタと地下の川に降り注いだ。

 

 井戸の真下はその落ちて来る雨水を日の光が照らし出し、そこだけ円柱の黄金の滝さながらであった。



「大丈夫かなぁ?思ったより上から雨水が漏れて来る。」

ドルンと何人かの兵はいかだの屋根にヒョイと乗り、自らが屋根となって落ちて来る水を防いだ。


 と、その重みが加わったのか、少し沈み込んだいかだは安定し、彼らの泳ぎのスピードと合わせる様に流れ出した。



 ドルンは筏の屋根に仰向けになると、落ちて来る雨水を口を開いて受け、ゴクリと飲み込んだ。


(なんだか、水と縁があるな。カマラを射たフラミンガの沼。ニジェ達とマンディンカに向かった時の嵐の中の船。ニジェとガーラの攻防を伝えに丸太の木船に乗ってジョラに戻った日。そしてそのフラミンガを制圧に向かった時のポロロカ。いつも戦いは水の上だ。いつも水の上にいた。そしてまた水の上にいる。)


 


 「25!」「26!」「27!」

兵達は皆、日柱を大声で数えながら進んだ。


  「28!」


『もう少しだが、ちょっと休もう!この日柱の下、岩場に上がれ!筏は下した時の縄でその辺りの岩にくくり付けておけ!

暗くて良く見えんが皆んなおるか~!溺れた者はおらぬか~?』


ドルンは頭数を数えると、ファルに向かって両手で丸を作った。


 

 

「流されるのも疲れますわね、、」

岩に上がったマンサの身体からはポタポタと地底の水が流れた。

日の柱の下、その褐色の肌を落ちていく水滴は、あの洞窟入り口さながらのトパーズに光った。


『マンサ、綺麗だよ。』

 「何よこんなとこで。照れるじゃない。」

『ん?いやその水滴。』


 「ドルン!!銃を貸しな!!」

ドルンは水面をすくうと、その水をマンサの手元にバシャと放った。

 「ほらよ!」


マンサはその水を受け取った振りをすると、両手を組んで両の人差し指をファルに向けた。


「ドッキュ~ン!」

マンサのその声が洞窟内に響き渡った。


皆の笑い声が、後を追う様に木霊こだました。

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