殺戮と滅亡 12~二つの再会
「サバ様~!戻って参りましたぁ~!」
『おー!ブラル!どうだった?アコカンテラは上手く流せたかい?』
「すみません。それがまだでありまして。それより何より、サバ様にお目に掛けたい者達が。」
『お目に掛けたい?こんな山奥に誰かおったというのか?』
「はい。」
林の中からヌ~と出て来たのはカザマンス王国兵75人であった。
『ううっ、なんだこいつらは!敵か!?』
「サバ様。よくご覧になってください。」
『あっ!ううっ!ガーラ!ガーラ護衛官ではないかぁ~!!』
その声を聞いたガーラはサバのもとに走り寄って来た。
顔をクシャクシャに、そのシワに流れる涙も拭かず、サバの前に一心不乱に駆け寄って来た。
そばまで寄ると、サバの足元に跪き嗚咽した。
「わあわあわ~!まさか生きておいでになられるとわぁ~!」
ガーラはサバの顔をしかと見届けると、また頭を垂れ泣き出した。
『それはこっちのセリフでもあるぞ、ガーラ。よく生きていてくれた。苦労をかけたな。』
「苦労?滅相もない!私達は皆逃げたのであります!苦労どころか、護衛の役目も果たせずに見捨てた私達をお許し下さい。」
『あのフランス軍の奇襲では、、致し方ない事だ。』
「そのようなお言葉、、」
ガーラの拳は地面の草を強く握り締め、またシクシクと泣き出した。
「この者達、私達の味方。互いに協力し合おうということになりまして。」
ブラルとバズがサバに言った。
『当たり前だ。同じカザマンスの民だ。一緒に戦おう。』
今度はハラがサバに歩み寄った。ハラもサバの前に膝をつけた。
「わたくし、この部隊の長。ハラと申すものであります。サバ様には勝手ながら、我がジョラ族はマンディンカより逃げて参ったこの者達と、この山の向こう、ジョラの先にカザマンス王国を築きあげまして、、、、あれ?ん?」
『ん?で、どうした?』
「あ~!ワァ~!」
ハラがいきなり呻いた。
『なにごと?』
サバの足元。跪いたその股の下の先。
「あっ!あれはぁ!ンバイとマリマ!!わあわあ!」
『知っておるのか?』
「知っているどころではありませんよぅ~!」
話の途中であったが、ハラはサバの横をすり抜けると走りながら二人に手を振った。
「ンバイのおじさ~ん!マリマのおばさ~ん!!ハラです!ハ~ラ~ぁ!」
ンバイとマリマがその声に振り返ると、そこには大きくも逞しくなったハラがいた。
「おー!ハラぁ~!」
ンバイもササッと駆け寄った。
二人は抱き合うとしばらく黙ったまま互いを強く抱きしめた。
「生きておられたんですね。」
「おう、マリマも一緒だ。ずっと一緒だった。」
「それは、それは。」
「お前大きくなったな。ジョラの事は一時も忘れてはおらぬぞ。」
「はい、はい、はい、はい。」
「ところで我が息子、ファルはどうしておる? ディオマンシに扱き使われてはおらぬか?それが心配で心配で、、」
それを聞いたハラはふと思った。
(あっ、おじさん、おばさんじゃないや)
「ンバイ様。マリマ様。今我がジョラの村は、、」
「むむ?ちょっと待てハラ。「様」はおかしいであろう?お前は我が子の良き友、良き兄貴であろうが。私達夫婦は単なるその親だ。」
「いえ、全てが動いたのであります。全てが大きく変わったのであります。率直に申し上げますと、ンバイ様マリマ様のご子息ファル様は、今や我がカザマンス王国の絶大なる王にあらせられます。」
「はっ?何?何が起きたのだ? ファルが?あの寝坊介のファルがぁ? ディオマンシは?」




