殺戮と滅亡 10~通訳ワリと軍用犬サラ
ハラとガーラ達75の兵はその4艘の船を警戒しながら山の麓に降り立った。
蒸れるような炎天下の川沿い。カンビヤ川の水路の手前であった。
「どういたしましょう?ハラ殿。洞窟に入るには奴らの前を通り過ぎねばなりませんよ。」
「奴らが何をしているのか、しばらく様子を見ぬと踏み込めないな、、」
ジャブジャブ ザワザワ
「なんだ?水を掻く音?話し声? 川だ。葦の中。伏せろ!」
ハラ達は木々の根元。茂った草むらに慌てて屈んだ。
「筏か?誰か乗っている。部族の者だぞ。」
ハラとガーラが草の間からヒョイと覗いた。
「マンディンカの生き残りか?奴隷?」
「あれ?数人だがフランス人らしき者もおるぞ。」
「フランス?一緒に?兵ではないのか?」
「この暑さ、上半身は裸だ。肌が白い。」
すぐさま草の上に顔を出したのは、以前フランス軍の通訳を務めていたワリであった。
「ん~?あれはフランス兵だ。」
「なぜわかる?」
「顔を知っている。生きていたのか、、」
「どういう事だ?」
「バスチア軍。ガーラ殿がグリオの集会所で焼き討ちにした兵の残党。」
「ええ~!あの爆発の中、逃げ延びた奴がおったのか~?」
「らしいです。」
「それが証拠に。ほれ、よく見てご覧ください。あの背中。二人とも大きな火傷の跡が。」
「本当だ。酷い跡だ。」
その時であった。
「まずい!!」
ワリが大声を上げてしまった。
「サラだ!!こっちに来る!!」
それは、バスチア部隊と帯同していた軍用犬のサラであった。
久しぶりにワリの匂いを嗅ぎつけたのか、まっしぐらにハラの部隊に向かって走って来た。
ワンワン!!キャンキャン!グルルルル~!
ワリは背を向けて逃げようとしたが、あっという間に掴まり、背中に飛び乗られてしまった。
サラはワリの首の周りをペロッペロと舐め始めると、尻尾をグルリグルリと回した。
「誰だ~!!そこにおるのはぁ~!!」
筏から降り、仁王立ちになったのはサバのアコカンテラ部隊長ブラルであった。
その後ろで、バズ、カロ、ダラが弓と銃を構えた。
20人ほどの部隊だと見極めたハラは皆に立ち上がれと命じた。
草の間から75のカザマンス王国ハラの部隊が弓と銃を構え、凛と立ち上がった。
「あっ!!あれはガーラ護衛官!」
アコカンテラ部隊の中のマンディンカ人が声を上げた。
「ブラル殿!待って下さい!マンディンカの宮殿においでになった偉いお方、ガーラ殿であります!」
「護衛官? 誰の?」
「マンディンカのバル王、そしてサバ王子の信頼なる護衛官殿であります!」
木々の間から木漏れ日を受けた75の褐色の肌。
汗に光ったその身体は密林から現れた75頭の獣のようであった。
※火傷を負った二人のフランス兵。
「カザマンス・FIRST」火蓋の上下43~レノーの十字架の2人のフランス兵です