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殺戮と滅亡 8~洞窟を抜けた先

「カザマンスの川まではどれくらいの時間を要しますか? 二コラ殿。」

 「4時間ほどだ。」

「では日の柱が届くのは?」

 「その間だけだ。」

「それで、この時間を選んだというわけですね?」

 「その通りだ。」


「お教え頂いたのは有難いのですが、地上を行軍した方が早いのでは?」

 「いや、途中密林にはばまれる。厄介やっかいだ。」

「そういう事ですか、、」

 「お前らは初めてなのか?水門。」


「私達は、ジョラと戦う為の補給部隊でありましたので、カンビヤの水門は知っておりましたが。」

 「そうか、俺もお前達も元はレノー殿の配属下であったな。」

「あの時、ジョラの宮殿からレノー殿に『お前らは帰れ。後は俺に任せろ』と言われたのを思い出します。私達はレノー殿に救われました。」


ーーーーー


「二コラ殿。この井戸、といいますか日柱はどのくらいあるのですか?」

 「34だ。35が出口というところか。」


「そんなに!」


 大声を上げた兵の言葉が洞窟の先の先まで木霊こだました。

その声に揺れた空気は、垂れた鍾乳石に絡んだ水を頭上からポツリと落とした。

 はしゃいだ兵がヒタヒタと流れる浅い洞窟の川の水を蹴り上げると、跳ね返った冷えた水が顔をつついた。

 洞窟内はその水が冷やすのか、ひどくこごえる寒さであった。

その冷えた空気が地上との温度差で、背中から追う風が吹き抜けた。

 兵20人は足を速めざる負えなかった。




 

「これで、30個。二コラ殿、なんとか日が傾く前にカザマンス川に辿たどり着きそうでありますね。」

「この先の日柱もまだ立っておるのが見えます。足元のランプだけで大丈夫そうであります。」


ーーーーー

 

 「34。さあ次が出口だ。」


「あっ、川の流れる音が!」

「鳥のさえずりも聞こえてきた!」

 

 「別世界が現れるぞ。」

二コラが兵達に言った。


「空気も幾分暖かい。」

「湿気て来たな。」



ヒタヒタヒタ


「ここかぁ~!」

 急な上り坂の頭上から眩しい陽射しが降り注いだ。

それは黄玉おうぎょくのトパーズ。目の前に広がった塵や滴を巻き込んだ空気の塊りは、まるで巨大な宝石が空から降って来るようであった。


 兵達は持っていた縄をその岩々の角張った先に放り投げて引っかけた。

その縄を手元に引き寄せる様に上り詰めると、

4メートル四方に空いた大きな岩窟の出口に出た。。

 兵は強い光にしばらく目を強く瞑った。


「出た!」


  「そうだ。ここが洞の出口だ。」


ザワ  ザワ ザワ


『どこへ行くんだい?』「どこへ行くんだい?」

 

 「ん?誰だ?」


叢からスッと出て来たのは褐色の男。

「お久しぶりでございます。二コラ殿。アゾにてございます。補給部隊で通訳をしておりましたアゾでございます。」



 するとすかさずその背後から一人の片腕の無い部族の若者が、持っていたやりを地にドンと現れた。

 

二コラと目を合わせた、そのトパーズの如きの目の男はヒュ~と口笛を吹いた。


 身を引く様に後退りしたフランス兵20の周りには、いつの間にか弓を背にした褐色の部族75人が取り巻いていた。


  『カザマンス王。ファルにてございます。』

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