殺戮と滅亡 6~少佐二コラは知っていた
ジルベールは上機嫌であった。
パルマランの兵が近くマンディンカに駆け付けると、信じて疑わなかったからだ。
「では、水路の方、20名ほど向かわせましょう。カザマンス川に向かわせる兵の手配を致しましょう。」
二コラがそう言うと、ジルベールは高笑いを始めた。口元の葉巻がユラユラと動いた。
『向かわせるぅ?向かわせるとは何ぞ?』
「いえ、ですから水門を開けに行く兵を、、」
『バカ!!お前が行くんだ!お前が兵を連れてゆけ!』
「えっ、あっ、、私が?」
『これからはアラン。パルマランのアラン・ジュニオールがわしの片腕だ!』
「あっ、、」
『早よ行け‼ 二コラ二等兵!ハハッ!』
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「もう俺に気を使わんでいい。お前らと同じ一兵卒だ。」
「二コラ殿、、あのジルベールに、、」
「もう良いもう良い。早い所水門を開けて水路に水だ。」
乾燥の大地、目の前に広がる淡い紅茶色の乾いた砂。どこから水を取り込んだのか、幹の太い大木だけがポツリポツリと立っていた。
「二コラ殿。喉が渇きますな。持って来た水筒ではとても足りませぬな。」
「もう、殿はいらん。二コラで良いわ。」
「そう言われましても、、無理であります!」
「水筒では足りぬのは、分かっておる。俺には秘策がある。」
「秘策?」
「そう、ジルベールにせっかく片腕にしてもらったのでな。ハハッ!ここで使わせてもらう。」
「意味がわかりませんが。」
「良いか。お前らよく聞け。」
二コラは近くに寄れとばかりに20の兵を呼び寄せ、輪になった。
「実はな。これはジルベール以外には、ロドルフとモルガン、それと俺しか知らぬ事。お前らに教えてやる。」
兵は身を乗り出した。
「この砂の大地、この地下には洞窟が走っている。」
「えっ、えっ~!」
「カザマンス川からカンビヤ川に掛けて南北。人の背丈の数倍はある洞だ。」
「びっくりです!」
「そこに水が流れておる。この地からは想像も出来ぬくらい冷えた水。」
「おーお!」
「石灰質でな。その持って来たスコップでちょいと掘れば水溜まりが出来る。それを掬ってゴクリと。」
「美味しいでありますか?」
「もちろんだ。ただな、洞窟だ。真っ暗だ。ゆえに持って来たのだ。その鯨油のランプを。」
「なるほど。二コラ殿は初めから洞窟とやらを教えるおつもりで?」
「もちろんだ。いいか。なにか事が起こったら、この洞窟を使え。逃げ延びる事が出来るかも知れん。それゆえ、お前達20人を選んだんだ。」
「あっ!有難き幸せ!」
「ジルベールに恨みを持ち、俺の言う事は良く聞いてくれたお前らだ。」
「そうです!私達は皆、レノー大佐殿に仕えた身。二コラ殿も同じであったはず。」
「あのマルーラの木。3本立っておるであろ?あの一番左の根元。井戸がある。竪穴が掘ってある。しかしただの井戸ではない。下に降りれば洞窟。ほれ!その縄梯子を使ってな。降りる。」
「これは水門を引っ張る為の縄かと思っていましたが、、」
肩にグルグルと縄を巻きつけていた3人の兵は、同じように自分の肩を見やった。