殺戮と滅亡 4~カンビヤの岸辺
これより数日前の事であった。
マンディンカの宮殿。いわゆるジルベール軍率いるマンディンカ部隊の本部。
その一部屋。遣使アクラが使っていた部屋の床下から見つかったモリンガの道の地図を頼りに、ジルベール軍20人はカンビヤ川沿いに向かっていた。
「おい、なんだ?この物音は?」
「獣でも鳥でもない。人の声だ。」
「数人ではないぞ。かなりの人数だ。身を伏せろ。」
フランス兵達は生い茂る叢の中、身を屈め、音や声のする方に目をやった。
「あれは我が軍の国旗ではないか? 上の方しか見えないが、、船か?」
「地図を見るとこの先はカンビヤの川になっている。」
ポンポン!
「うああぁ~!」
一人の兵が肩を叩かれた。
「何をしておる?」
叩いたのはこの船にサバ、バブエと共に乗って来たフランス軍兵アラン少尉であった。
「あっ!パルマランの!アラン少尉殿!」
「お前ら、どうしてここに?」
「いえ、それはこちらのセリフ。アラン殿こそなぜここに? しかもこんな山奥に。」
「お前達から話せ。」
「はっ!私達はジルベール将軍の命令で、、そのぅ、、なんと言いましょうかぁ、、あっ偵察でございます!偵察。」
「こんな山奥にか?なにか探し物であろう?」
「、、、」
「でジルベールはどうしておる?」
「アラン殿。呼び捨ては如何なものかと、、ま、相変わらずふんぞり返ってはおりますが、、」
「ハハッ!そうか、そうか!」
「それよりも、アラン殿これはいったい?」
「全員立て!そのまま前に進め!」
アランはジルベールの兵20に命じた。
「草を掻き分けて、川を見てみろ。」
「うおぉぉおぉお~!!」
「なんですかぁ~?!これはぁぁ~!!」
目の前に現れたのは大きな機帆船2艘と蒸気船2艘。その岸辺には褐色の大群衆。
アコカンテラを積み下ろす者、武器の支度をする者で岸は埋め尽くされていた。
「こ、こ、これは、、?奴隷?アラン殿が連れて参った?」
「彼らの足元を見てみろ。」
「あっ!鎖も鉄球もない、、」
「そうだ。ただの群れではない。軍勢だ!」
「という事は?」
「言わんでもわかるだろ?この国の民達とジルベールを撃ちに来た。お前らはこれからどこに向かうのか知らんが、どうする? マンディンカにはもういくらもいないであろ?我がフランス兵は?」
「、、ご存じでありますか、、400足らずであります。」
「勝負は決まったも同然であろう? しかもこの民には、船に保管してあった大量の武器、兵器。全て預けた。」
「えっ?」
「どうする?お前ら。しかし、さっきの物言い、ふんぞり返っている?ってのは奴を好いとらん証拠だな?」
「あ、まあ、、」
「では、お前ら20人、俺達に協力しろ! さすればジルベール国家の民として奴隷の様に扱われずに済む。それよりなにより生きてフランスに戻れるぞ。」
「えっ、戻れる!?あっ!フランスに戻れるものなら。分かりましたっ!」
「誰か数人で良い。ジルベールにパルマランの兵が応援に来たと伝えろ。油断をさせろ。伝えたらまた戻って来い。モリンガの道に探し物があるんであろ?」
「あ、ご存じで、、?」
「この部族の者に聞いておる。ここからはモリンガの道だと。ここは偵察の場所ではないからな。ハハッ!」
『アラン殿。』
叢に立ち上がって話をしていたフランス兵とアランを見つけたサバが、河岸から歩み寄って来た。
『それでは面白くない。この船、もぬけの殻だったと伝える様に言ってくれ。』
「えっ?どうしてです?」
『少しばかり不安を煽っておけ。』
サバが言うと
「面白い。」
とアランは答えた。
「アラン殿。この方は?」
「マンディンカの王子。サバ様だ。」