マンディンカ闘争 35~毒の重さ
『マンディンカを過ぎた辺り。水路はそれより少し遡ったカンビヤ川から引いている。』
「という事はサバ様。一旦マンディンカの北側を通り過ぎると?」
『マンディンカに水を流すとはそういう事だバブエ。少し上流から流せば勢いも増す。』
「俺もジルベールから聞いた事があります。今もその水路を使っていると。しかしそれは元々サバ様がおられた、そのぅ、、バル王様のお考え?」
『そうだ、アラン。我々マンディンカの民が造ったのだ。』
「ジルベールはそこから眼鏡橋を引くんだろうか?」
「しかし、サバ様も御存じかと思いますが、この船ではその手前までしか行けません。船を乗り捨てアコカンテラを流すには筏で上るとして、マンディンカまでその毒を届かせるにはかなりの勢いの流れが必要。」
「いや、そこから流すのでは意味がない。もっともっと村に近づいてからだ。」
バブエがサバとアランの会話に割って入った。
『バブエ、アラン。俺は一つ気になる事があってな。実は、、バルと俺、それから遣使しか知らぬ事だがぁ、、』
「なんでありましょう?」
『実はな、マンディンカの宮殿の下に洞窟があってな。このカンビヤから南にカザマンス川まで抜けている。南北に縦断しているのだ。』
「えっ?洞窟?」
『そう、その洞窟は丁度宮殿の地下で開けている。というかそこに宮殿を建てたのだ。』
「その洞窟は水が流れておりますか?」
バブエがサバに聞いた。
『もちろん。その水源を利用したのが好条件の立地だったというわけだ。俺達よりも随分昔の人達はそれをわかっておった。まっしかし水路とは無関係であるから大丈夫だとは思うが、、』
「いや!それはそこにも流れ込むかも知れません。」
バブエが言った。
『なぜだ?』
「アコカンテラは水より重いのです。下へ下へと流れます。」
『重い?俺はその宮殿の地下に侵入し、フランス軍に攻撃を掛けようと思っているのだが。』
「カザマンス川の上流に赤い泉というアコカンテラの森がございます。ここの水は真っ赤に染まり死の池と言われておりますが、少し下流に下りますとまた元の透き通る水に変わります。なぜか? それはアコカンテラの比重にあります。水より重い毒は川底まですぐに沈んでしまうのであります。そこからは獣達の楽園となりますが、底を流れているのは猛毒。ワニなどは岸辺で休み、水面の獲物を狙います。それが人目につく為に恐れられているのが所以」
『さすが、植物学者だ。という事は毒が水路から地下に漏れ出す可能性が高いと?』
「もし、宮殿の地下。洞窟に侵入するのなら、その水は決して飲んではなりません。」
「けど、、赤くなるんですよね?その水。」
ブラルが口を挟んだ。
「だったら、赤くなければ大丈夫ってことではないのですか? 水の色で判断をすれば?」
「ブラル。よく考えてみろ。洞窟は真っ暗闇なのだぞ。」
バブエがそう言うとアランが呟いた。
「誠、恐ろしいわ。」