マンディンカ闘争 26~モリンガの道で光ったもの
ハラとガーラ率いる75の兵は、モリンガの木を確かめながら、マンディンカに向かっていた。
時には根元、落ちている葉、頭上を見上げながら、モリンガの道を逸れぬようにだ。
暑く湿気た森は彼らの体力を奪っていった。
彼らは涼しい夜の内だけ行軍し、昼は木陰で休もうとしていたが、どうにもこうにもモリンガの木の定めが付かず、しぶしぶ昼間の行軍を決めた。
「ここらで休もう。」
ハラが皆に促した。
「ガーラ殿。大丈夫であるか?」
「ああ、このくらいは訳もないが、まだ先は長い。慌てなくても良い。ゆっくり行かんとマンディンカに着く頃には闘えぬ体になるぞ。」
「満月になれば夜でも光は差すが、この密林。それも届くかどうか?」
ハラはまだ草むらに残っていた朝露を木筒に少しずつ流した。
喉を潤すものはこれ以外にもあった。
大きなブナの木だ。ブナの大木は幹に切れ目を入れると大量の水を噴射した。
「この木はな。成長と共に根元からな、毒素を出して周りの木を腐らせてしまうのだが、、、」
「知っている。周りの同じブナでさえダメにしてしまう。そして先に成長した一本が大木となるんだ。」
「ハラ殿。よくご存じで。」
「しかしここにはモリンガが沢山生えている。なぜだ? 遠い国から移した木は何百年と聞くが?」
「それは私にも分かりませぬが、モリンガは薬と成る木です。そのブナの毒素を消す何かがあるのでしょう。」
ハラとガーラはそのブナの大木の下に腰を下ろした。
「なんだこれは?」
「んん?獣の皮?毛?」
「こんな色の獣がおるか?」
「紫、、、」
ハラはその毛皮をホイと剥いだ。
そこにはいくつもの白骨が転がっていた。
「なんだ?この獣は?」
「ガーラ!!これはぁ!頭蓋骨っ!」
「うっ!どういう事だ?」
「人間の物だ!そんなに遠い昔のものではないぞ。ほら、この紫の皮は着ていた物だ!」
「あっ、この色。見覚えがある。」
「えっ?」
「バル王の使いで、この先の断崖の集落。ドゴンに行った時の物だ!」
「ではこの骨はドゴン族の民?」
「きっと、そうであろう。」
ガーラは草を掻き分けて、野探しを始めた。
「おう、これはまさしくドゴンの矢。間違いない。」
真上の太陽が生い茂った木の隙間から降り注いだ。
「今、何か光ったな。」
「えっ?」
「その破れた毛皮の間。」
「露か何かでは?」
「いや、、」
ハラはその白骨の上に被さる様に重なっていた紫の毛皮をペロと剥いだ。
「これは!!」
「あっ!」
「ニジェが持っていた物!虹色石だ!」
「本当だ。虹色石だ!」
ハラは露に濡れたそれを手に取った。
光を集めたその小さな石は、手の平に虹を作った。
「私はてっきりバル王の宝と思っていたが、、」
「これはドゴンの物だ。その証拠に、この落ちている首飾り。すべて虹色石の玉だ。」