静かなる内戦22~ハラ
『わからん。』
『まさか年寄りまで連れて来るとは思わなかったな。子供連中まで。』
『それはオレも驚いた。そこはオレのミス。』
『ディオマンシは俺たちの考えてることより、更に上をいくな。』
『けど、カマラの『年寄は放っておけ』で少し安心したよ。』
『なんで?』
『何が何でも連れて行くってことじゃないだろ?休めるとこがあれば、ムル爺みたいに休ませておけばいい。ものは取りようだ。』
『なるほど。』
ハラは農民だ。ジョラに階級をつけるとしたら一番下だ。
彼ら農民は、収穫したトウモロコシやコメを皆ディオマンシに分捕られ、自分たちは狩った小動物や木の実を食べて暮らしていた。ヤギや鶏も飼ってはいるが、それらも全てディオマンシの管理下だ。
ディオマンシが肉を食べたいと言えば、農民達が順番に差し出していた。
『ファル、なぜ皆がお前に従ったかわかるか?』
『わからん。』
『ンバイとマリマはグリオの中でも誰からも愛され尊敬をされていた。俺達が困っていれば、真っ先に駆けつけて助けてくれた。お前はその子。しかしお前が一人になってからは、誰もお前のことを助けられなかった。それでもお前は毎日弓矢の鍛錬もバラフォンの練習もかかさなかったな。立派じゃ。皆んな見てるよ。皆んなわかってる。』
『オレはいいよ。一人が楽。でもさ、ディオマンシの見境ないやり方には呆れた。殺戮や強奪。まだまだ他にもたくさん。まだ小さかったからよくわからなかったけど、15にもなれば色々見えてくる。わかってくる。』
『さすが、ンバイの子。』
『でハラ兄さんに相談したんじゃ。』
『皆が承諾してくれたのはンバイとマリマのおかげじゃぞ。』
ハラはニコとして言った。
ハラとファルは列の最後尾に追いついた。
『俺はもう少し前をゆく。後ろの年寄連中をたのんだぞ!』
『ガッテン‼』
ファルがそう答えると、
ハラは水を蹴散らしながら前列へ向かって行った。




